衰弱の一途 ページ30
.
次にAが目を覚ましたのは、その二時間後。
しかし、目が覚めても、すぐにまたうとうとして眠りについていたので、皆は無理に起こすことが出来ないでいた。
結局その日は、一日中、眠ったり起きたりを繰り返すこととなった。
起きていても、説明しろと強く言えない。
少しのストレスで壊れてしまうのではないか。
今のAはそれほどまでに危うかった。
−−−−−
それから一週間ほどが経った。
ほぼ寝たきり、声をかければ少し反応する程度にまで衰弱してしまっていた。
調子が良くて、起き上がったり立ち上がったりすることが出来たとしても必ず支えがいる。
そして、皆がなによりも怖くてたまらないのが、彼女の妖気が、一番初めに目を覚ました時よりも少しずつゼロに近づいていることだった。
現在、時刻は朝の五時。
黒田坊はAのそばにいた。
『…ねぇ…黒…？』
「…はい…」
『…ごめんねぇ…
そんな顔…させて…ばっかだね…』
「…っいえ…
ただ…絶対に死ぬなんてこと許しませんよ…！？
…この奴良組の誰も許しませんっ！」
『…っ！
ふふ、ありがとう…』
「…っ、」
Aは決して、"死なないよ"とは言わないのである。
黒田坊はここ数日、油断したら涙が溢れてきそうだった。
「…どうして…
なにも言ってくださらないのですか…
拙僧は、少しは信頼されてると思っていました。
それは、勘違いですか…？」
『勘違いじゃないよ…
でも…言ったら、絶対止められる…』
「あたりまえです…！
こんな結果になるのであれば、止めますよ…！」
『…わたしはね…？
みんなが…大事なの…みんなに生きて欲しいの…
そのためなら、なんでもする…』
「我々は…あなたに！
あなたに生きて欲しいんです…！」
『…っ！』
Aはツーッと一筋の涙をこぼした。
『…黒、少し手を貸して？』
「…はい」
Aは黒田坊の手を取ってゆっくりと起き上がり、縁側の方へ移動した。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 165人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「原作沿い」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
怜。(プロフ) - ユキにゃさん» こちらも読んでいただいたんですね！ありがとうございます！感情移入していただけたようでめっちゃ嬉しいです！ありがとうございます！よかったら今後ともよろしくお願いします！ (7月19日 23時) (
レス) id: 65413915ce (このIDを非表示/違反報告)
ユキにゃ(プロフ) - 呪術の方を先に読んでしまい完全に読む順番間違えました笑 それにしてもこちらの作品も素晴らしい文才力ですね！ラストめっちゃ号泣しました黒田坊の想いがめっちゃ伝わってきた…😭主人公ちゃんと幸せになってほしかった…でも番外編で生存ルートが読めてよかった (7月19日 14時) (レス) id: 0ca6f61909 (このIDを非表示/違反報告)
怜。(プロフ) - ツバキさん» コメントありがとうございます！！そんなことを言っていただけるなんて！めちゃくちゃ嬉しいです！！ありがとうございました！ (2022年4月18日 13時) (レス) id: 65413915ce (このIDを非表示/違反報告)
ツバキ(プロフ) - 死ぬほど泣きましたありがとうございました最高です (2022年4月18日 9時) (レス) @page39 id: b2e58f839d (このIDを非表示/違反報告)
怜。(プロフ) - 紫音七都さん» コメントありがとうございます！表現の仕方を気に入って頂けるのはすごく嬉しいです！今後もよろしくお願いします！ (2021年11月10日 23時) (レス) id: 0029dd2ea6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：怜 | 作成日時：2020年4月9日 15時
