第三の離宮 ページ2
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そこは、墓場のような場所だった。
『あんたが、晴明の息子か…』
「……心結心結や有行はどうした?」
『今仲間が…戦ってくれてるよ』
その男の眉がピクリと動いた。
「……妖よ…
陰陽の均整が最も美しかったあの時代を…この時代に晴明様が再建されるのだ。
だから絶対にここは通さぬ…!」
男は…安倍吉平といった。
父の意志を継ぐため、私は千年ここにいるのだと。
そのとき、突如天井が開けた。
そして、雲が集まり…
「天よ、雲よ、矢を放て。陰陽術"天候制御"」
『っ!』
「A様!」
黒田坊がAを抱え、飛んで避けた。
『ありがとう…黒』
「いえ…」
『あんた…千年ってそりゃまた…すげぇな。
…だが、私はここで負けるわけにはいかないんだ』
そう言って彼女は微笑んだ。
『私にも、理想の世ってのがあるんでね』
「理想の世、だと…?」
『あぁ、人と妖が共存する世界…』
「なぜだ…?なぜ、そんなものを望む?
お主…半妖か…?」
『正確には四分の一。
あんたと一緒だよ…?』
「…!
はっ!そんな理想叶わぬ。晴明様がいる限りな。
わからせてやろう。オレの真の力で…」
すると、吉平の体に変化が現れた。
狐の尾が生え、髪も伸び始め…
…妖となった。
考えてみれば当然だ。
晴明の息子ということは、羽衣狐の孫だということ。
狐の血を引いているのだ。
しかも、Aやリクオと同じ四分の一の妖怪だ。
「小さい頃から人でも妖でもない、この身体に悩まされた。
この血は謂わば呪い。
我々はそれを受け入れるのみ。
オマエも本当は知っているのだろう!
この身が幸福な存在ではないのだと!」
吉平は刀を構え、Aに向かって突進してきた。
避けようと思えば避けることができる距離だったが、それでも彼女は何故か微動だにしなかった。
「A様!」
黒田坊は避けようとしないAに焦り、吉平と彼女の間に飛び込もうとした。
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怜。(プロフ) - ユキにゃさん» こちらも読んでいただいたんですね!ありがとうございます!感情移入していただけたようでめっちゃ嬉しいです!ありがとうございます!よかったら今後ともよろしくお願いします! (7月19日 23時) (レス) id: 65413915ce (このIDを非表示/違反報告)
ユキにゃ(プロフ) - 呪術の方を先に読んでしまい完全に読む順番間違えました笑 それにしてもこちらの作品も素晴らしい文才力ですね!ラストめっちゃ号泣しました黒田坊の想いがめっちゃ伝わってきた…😭主人公ちゃんと幸せになってほしかった…でも番外編で生存ルートが読めてよかった (7月19日 14時) (レス) id: 0ca6f61909 (このIDを非表示/違反報告)
怜。(プロフ) - ツバキさん» コメントありがとうございます!!そんなことを言っていただけるなんて!めちゃくちゃ嬉しいです!!ありがとうございました! (2022年4月18日 13時) (レス) id: 65413915ce (このIDを非表示/違反報告)
ツバキ(プロフ) - 死ぬほど泣きましたありがとうございました最高です (2022年4月18日 9時) (レス) @page39 id: b2e58f839d (このIDを非表示/違反報告)
怜。(プロフ) - 紫音七都さん» コメントありがとうございます!表現の仕方を気に入って頂けるのはすごく嬉しいです!今後もよろしくお願いします! (2021年11月10日 23時) (レス) id: 0029dd2ea6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:怜 | 作成日時:2020年4月9日 15時