いないという事実 夏油side / 七海side ページ44
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夏油side
私は、屋上の淵に背中を預け、そのカードを見つめた。
…この女性は、Aだ。
カードの中の彼女は微笑んでいる。
…今、私の心にポッカリ空いた大きな穴の半分だけが塞がった。
それは、Aの存在を、彼女が私に与えたとてつもなく大きな影響を思い出したから。
だけど、同時に、ここにAがいないという事実が嫌というほど突きつけられた。
全然涙が止まらない。
…A、どうして。
思い出したかった。
Aを忘れたくなかった。
だけど、なんで…なんで思い出させたんだい…?
理不尽なことを言っているのは分かっている。
だけど、このカードはAの力だ。
Aの意思で私たちを忘れさせたはず…
…Aはどこかで、私たちに思い出してほしい、って思ってくれていたんだろうか。
そう思ってくれていたなら…
カードの中のAをそっと指で触れた。
「会いたいよ、A…」
−−−−−
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七海side
夏油さんは、脱力したように仰向けになって、2枚のカードを胸に置いて、目を瞑った。
大粒の涙を流し続けたまま。
私も…思い出した。
Aさんのことを…
だけど、こんなにも泣けないと思った。
夏油さんのAさんへの想いは計り知れない。
「…どうしたら、いいんだろうね、七海」
「…っ、」
夏油さんは腕で目を覆った。
「…っ忘れたままでも、思い出しても、苦しくて堪らないよ…」
そう言った夏油さんの口元は歪んでいた。
…
そのとき、私はあることを思い出した。
「あの…夏油さん」
「…なに」
「Aさんがもし…もし死んでしまっていたとしたら、遺体はどこに…?」
「っ!?」
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生存の可能性 夏油side→←"Remember" 夏油side
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怜。(プロフ) - 優生さん» ありがとうございます!😭がんばります! (4月17日 21時) (レス) id: 65413915ce (このIDを非表示/違反報告)
優生(プロフ) - 応援してます、頑張ってください (4月17日 21時) (レス) @page40 id: 5de943fe2a (このIDを非表示/違反報告)
怜。(プロフ) - たむ。さん» 👍ありがとうございます😭 (4月15日 11時) (レス) id: 65413915ce (このIDを非表示/違反報告)
怜。(プロフ) - 麻衣さん» 👍ありがとうございます😭 (4月15日 11時) (レス) id: 65413915ce (このIDを非表示/違反報告)
怜。(プロフ) - みづきさん» 👍コメントありがとうございます😭そう言っていただけるとすごく力になります! (4月15日 11時) (レス) id: 65413915ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:怜。 | 作成日時:2024年3月17日 18時