人妻を抱く勇気はない…? ページ10
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七海side
『人妻を抱く勇気はない…?』
「…っ、」
一瞬だった。
その揶揄うような表情の中に、影を帯びたのは。
「Aさん…貴女、最低ですね…」
『ふふっ、なんとでも』
これは、所謂"不倫"に誘われているのだ。
いくら彼女のことを好きだとはいえ、さすがに、倫理的に道徳的に抵抗があったし、彼女にそんなことをして欲しくないという思いもあった。
私は、ぎゅっと目を閉じて、その誘惑を振り切り、辛うじて残る理性で断ろうと思った。
だが、そのときの私は、彼女がどんな表情をしていたかなんて、知らなかった。
『…わかった、もういい』
「…え?」
『真面目な七海には無理ね』
「…!」
『呼び出しておいてごめん。
もう帰っていいよ』
一瞬で厚い壁を作られた気がした。
「…あ、」
彼女が背を向けて私から離れていく。
『なに?』
私はいつのまにか彼女の腕を掴んでいた。
「どうする、つもりですか」
私の方を振り向いた彼女には表情がなかった。
『七海に関係ある?』
「…Aさん」
好きな女性からの拒絶がこんなにも苦しいなんて。
この手を離せば、一生会えなくなるような気がして、無意識に力を込めていた。
『…っ、七海、痛いって』
「…っすみません」
でも、私はその腕を離しはしなかった。
苦しい…
彼女に最低の一線を越えてほしくはないが、自身の欲望も渦巻いている。
ったく、どうしろっていうんだ。
『七海』
「え?」
『今、何時?』
「…?0:05ですけど…」
『じゃ、急がないと』
「急ぐって、どこに、」
どこに何をしに、と言いかけてすぐに理解した。
まさか埋めてくれる人を、一夜の相手を探しに行くつもりか?
『七海、腕離してくれない?』
にっこりと笑う彼女に、その壁が段々と厚くなっているような気がした。
「…っまってください。
せめて、私に、私にして下さい…!」
本当、最悪だ。
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怜。(プロフ) - コーンクリームコロッケさん» コメントありがとうございます!そんなふうに言っていただけるのすごく嬉しいです! (11月29日 23時) (レス) id: 65413915ce (このIDを非表示/違反報告)
コーンクリームコロッケ(プロフ) - サイコーすぎて泣いた…… (11月29日 8時) (レス) @page47 id: 45395c9c17 (このIDを非表示/違反報告)
怜。(プロフ) - 真さん» コメントありがとうございます!めちゃくちゃ嬉しいです😭😭無事に完結できました!ありがとうございます! (8月21日 23時) (レス) id: 65413915ce (このIDを非表示/違反報告)
真(プロフ) - これからの更新が楽しみで仕方ないです!!!!!これからも頑張って下さい!!!! (8月21日 1時) (レス) @page46 id: dec522902b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:怜。 | 作成日時:2023年8月2日 23時