呪術の世界に女神が舞い降りた。【呪術廻戦】【ぬらりひょんの孫】

線引き　虎杖side ページ26

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虎杖side







『多くの人を助けたいと思うこと自体はすごくいいことだと思う。

でも、そうやってしらみ潰しに人を助けていったとしたら…
それに拘りすぎていたら…

本当に大事な人の命取りこぼしてしまうんじゃないかなって思うけどね…』




Aは言葉を選びながら言っているような気がした。

だけど俺にとっては、痛いところを刺す刃物のようだった。










Aはゆっくりと亡くなった彼のそばにしゃがんだ。







『彼の母を思って彼を連れていって、もしそれが原因で逃げ場がなくなったりして…

恵が死ぬことになったら？
野薔薇が死ぬことになったら？

それって…嫌じゃない？


出来るだけ多くの人を助けたい、苦しむ姿を見たくない、そういう気持ちはわたしも経験があるし、共感できるけど…

でも、線引きはちゃんとするべきだとも思うよ』





「線、引き…？」





『うん、そう、そもそも助けるかどうかやどこまで助けるかの線引き。

大体、自分や自分が大切に思う人たちに対して、愛がない人間、興味がない人間、むしろ悪意を向けてくる人間に対して心から愛そうだなんて思わないもの』







わたしは…だけどね、とAは少し肩をすくめた。








『そういう人たちにも大事に思う人や思ってくれる人がいるんだろうなって同情で胸が痛んでも、

同じようにわたしにとって大事な人が危機に瀕しているとき、わたしは迷わず"わたしにとって"大事な人を選ぶ。

…もちろん、
自分に余裕があるときならそういう人たちも助けるけどね。


わたしも…大事な人たちを助けるためにいっぱいいっぱいだったから。

目の前のそんなに知らない人たちを助けて、気づけば本当に助けたい人たちが死んでいるなんてことにはなってほしくなかったの』








Aの言うことはまるで、何かの講義かのように俺の中にスッと入ってきた。






Aはさっき、"いっぱいいっぱいだった"と言った。

過去形だった。




Aは何を思って生きてきたんだろう…


どういう経験をしてきたんだろう…





そう思うと胸が熱くなった。



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