嫌だ * ページ9
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Aside
私は、久しぶりに帰ってきた自分の屋敷が一瞬他人のものに思えた。
例えば、以前入り浸ってた友人宅に久しぶりにお邪魔した、みたいな。
それだけだったらまだよかった。
今までそうかもしれないなと思ってきた不確実なことが、より確実なものに感じていた。
「雛鶴」
「はい」
天元が雛鶴を呼んで、雛鶴がそれに答える。
ほら、もう絶対だ。
雛鶴と話していることが多い。
いや…それとも、もしかして今までもこんな感じだった?
私が天元のこと好きになったからこう感じるだけ?
わからない…
でも帰ってきたら、抱き締めて頭を撫でてくれるくらいのことはしてくれると少しだけ期待していたのに、それもなかった。
『はぁ…』
思わず小さなため息が出る。
そのとき、
『っ!!』
キーンッという耳鳴りのような音とともに、鬼舞辻の声が聞こえてきて、頭を押さえる。
『あ、うぅ、うーー…
…天元っ!!天元!!』
一瞬目の前が真っ暗になって、天元を呼んだ。
「A、A、
落ち着け、大丈夫だ」
天元はすぐさま駆け寄ってきてくれて、ふわりと私を抱き締めた。
途端に鬼舞辻の声が消える。
なんなんだろ、この現象は。
…でも、気のせいかな。
私に触れるか触れないかぎりぎりのところで抱き締めているって感じだ。
全然密着する感じではない。
『…』
「…どうした?まだ聞こえるか?」
もう治ったって言ったら、どうせすぐ離すんでしょう?
『ううん…治った…』
私がそう呟くと、私に触れる温もりがスッとなくなった。
ほらね…
「っ!?」
私は俯いたまま天元の胸元をグイッと引っ張った。
『もうちょっとだけ…』
天元の喉がごくりと動いたのが見えた。
そんなに、嫌なの…?
「わかった…」
その声も心なしか冷たい気がする。
私のわがままで天元に抱き締めさせて…
天元がほんとにしたくないことだったらどうすんの…
.
この部屋にはいないけど、今も雛鶴たちの気配が近くにあるのがわかる。
ねぇ、天元
雛鶴たちにもこんなふうに触れたの?
なんで、こんなに嫌だって思うの…
なんで、こんなに泣きそうになるの…
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怜。(プロフ) - えなさん» 友人の方にお薦めいただけるとは!!こちらも感動しております!今後ともよろしくお願いいたします! (9月1日 1時) (レス) id: 65413915ce (このIDを非表示/違反報告)
怜。(プロフ) - えなさん» コメントありがとうございます!全然読みにくくなんてありません!感想を細かくいただけることが作者としては本当に嬉しいです!感想のコメントは長ければ長いほど嬉しいですのでこちらこそありがとうございます! (9月1日 1時) (レス) id: 65413915ce (このIDを非表示/違反報告)
えな(プロフ) - これも含めて7個もコメントしてしまって長ったらしく本当にすみません😂 最高の作品ありがとうございました!作者様のこれからの執筆活動も応援しております!!それと周りの鬼滅好きの子にこちらの作品を派手に勧めておきます!!💎✨ (9月1日 0時) (レス) id: e79cecb8f8 (このIDを非表示/違反報告)
えな(プロフ) - 会ったのは久しぶりです!!このような素敵なお話を書いてくださった作者様に感謝と尊敬を抱いております...!本当に本当にありがとうございました!!そうだ伝え忘れていましたが、キャラクターの口調の再現もとても上手でそれぞれが話し声が頭に浮かんできました! (9月1日 0時) (レス) id: e79cecb8f8 (このIDを非表示/違反報告)
えな(プロフ) - すぐ作者様にお伝えしたくて、あと余韻が残りまくりで興奮しているのもあり長文で読みにくい文章になってしまってすみません!また宇髄さんを供給したくなったときにこのお話を再度読めるようにお気に入りに追加させていただきました!こんなに読んで満たされた小説に出 (9月1日 0時) (レス) id: e79cecb8f8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:怜。 | 作成日時:2021年7月20日 21時