解放 ページ14
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「A…」
『はぁ…はぁ…』
ガクッと脚の力も抜けてしまった彼女は全身を首無に預けた。
「…ごめん、A…
ごめん…」
首無の口からは謝罪の言葉しか出てこない。
そして、首無の瞳から耐えきれなくなった涙が彼女の頬に落ちた。
『もう、謝んないで…
謝られたら…こっちまで沈んだ気持ちになっちゃう…
ねぇ、首無…終わったんだよ…?
もう…終わったの。
もう、私は…開放されるの。
嬉しい、でしょ…?』
彼女の瞳からも涙が溢れ出てきていた。
首無は彼女を隙間を埋めるように抱きしめた。
抱きしめられた彼女は目を瞑り、優しく微笑んだ。
そのとき…
ピキッと何かにヒビが入ったような音が聞こえた。
その音の間隔が狭まってくる。
『っ!』
いち早く気付いた彼女は自分の腕を上げた。
「え?」
首無も驚く。
彼女の手枷にヒビが入っていた。
そして…
妖怪として彼女の一部となっていた手枷足枷がパァンッ!と音を立てて弾け飛んだ。
彼女と首無は目を大きくさせ、見合わせた。
…
…
首無は鼻の奥がツーンとした。
見合わせている彼女の大きな瞳に吸い込まれていく。
気がつけば…
『っ!?』
自身の唇を彼女のそれに合わせていた。
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作者名:怜。 | 作成日時:2020年8月13日 13時