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救世主 ページ29

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「え…?」


『でも、母に泣きつかれた。

絶対そんなことしないでって。
娘にそんなことをさせるなら、死んだ方がマシだって』



「…当たり前だ、俺でも止める」



『ふふ…そうだよね。
でもそんな時、救世主が現れたの』



「…救世主?」






彼女は黙って頷いた。




『その人もそこまで裕福ではなかったけど、私たちの生活は保証してくれた。

母の治療費までは厳しかったけど、それでもありがたかった』




俺は眉間に皺を寄せた。



「そんな見返りもなくそんなことしてくれる人がいるのか…?」




『っ!ふっ…まぁ、聞いて?』


彼女は驚いた様子を見せた後、俺の肩にぽんと手を置いた。





「あぁ、悪い…」



『その人とは、一緒に暮らすようになって…

あるとき、母が伏せっている部屋で母と二人きりでいるところを見かけたの。

眠っている母の頬を撫でたり、愛おしそうな表情だった。

その人は母を愛してるんだと思った。

だから、助けてくれたんだって』



「そうか…」






なるほど…

それなら、納得がいく。





『でも…その人から相談を持ちかけられた』


「…相談?」


『僕は、君のお母さんに死んで欲しくないと…

生きていて欲しいのだと…

その人はとても言いにくそうにしてた…』


「まさか…」


『うん…たぶん、貴方の想像通り』


「…吉原に行ってくれ…って…?」





彼女は頷いた。





「ありえねぇ…」


『でも、わからなくもないでしょう?
愛する人とその子ども、どちらを優先したいかなんて分かりきってるもの』


「A…」


『それに…私も同じようなこと考えてたし…

私は、最初の自分の考えを選択した。

そのとき、母はかなり弱ってた。

だから、その人と私がそんな話をしていたことも、私が吉原に行く選択をしたことも、知らないままだった。

そして、私は吉原に売られ…

今ここにいる』






俺はなんと声をかければいいのかわからなくなった。





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亡くなっていた母→←闇の部分の話



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怜。(プロフ) - 時雨さん» ほんとですか!?ありがとうございます!!もしかして水禍の華以外のお話も読んでくださったりしているのでしょうか…? (2020年7月26日 22時) (レス) id: 0029dd2ea6 (このIDを非表示/違反報告)
時雨 - 前からずっと読ませていただいています!怜。さんのお話や書き方すっごくおもしろくて大好きです!陰ながら応援してます! (2020年7月21日 20時) (レス) id: 5e501a5e16 (このIDを非表示/違反報告)
怜。(プロフ) - シルバーウルフさん» ありがとうございます!(^^) (2020年6月30日 0時) (レス) id: 0029dd2ea6 (このIDを非表示/違反報告)
シルバーウルフ - 楽しかった。(o・ω・o)これからの更新も楽しみにしてるね。(o^O^o) (2020年6月29日 23時) (レス) id: 769a4deb70 (このIDを非表示/違反報告)
シルバーウルフ - これからの更新も凄く楽しみにしてる。(o・ω・o) (2020年6月26日 23時) (レス) id: 769a4deb70 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:怜。 | 作成日時:2020年6月23日 15時

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