ストーカーはブラック審神者 (ページ9)

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○ ページ9

病室に着き、看護師さんに続いて入ると月くんは優しく迎えてくれた。
彼の肩越しに見える山姥切さんと水心子さんはなぜか疲れたような顔をして何やら話し込んでいる…。

「点滴つけますね！もう自力で抜いちゃだめですよ？」

『はは…すいませんでした。もうやらないです…』

「何かあればすぐナースコールしてくださいね！」

『ありがとうございます』

彼女が慌ただしく出て行った後、ベッドの上で月くんからも絶対安静を言い渡されて、次病室から自由に出入りできるのはいつになるのだろうとぼんやり思った。

お風呂のたびに出入りは可能だろうが、あの看護師さんみたいにいつか木の根元へ座ってランチできる日はまだ遠いだろうって自覚があるからこそ、ちょっと残念に思えてきて項垂れてしまう。

月「さっぱりしたな。…外にいいもんでもあったか？」

『あ、そうじゃん。月くんなんで教えてくれなかったの！ここの病院本当に綺麗だったよ』

月「綺麗？」

『そうそう。森の中にいるみたいな。中学生の時に山にハイキングしに行ったこと思い出しちゃった。あの山の頂上で深呼吸した空気感がなんとなくあってね、』

月「……。」

『月くんの中学はあった？ハイキング。あっ、そうだ。ここって政府管轄の病院なの？』

「「「？！」」」

『審神者かって聞かれたんだよ。けど教えてもらった内容で合ってるなら違うじゃん？なんで間違えたんだろうね…私一般人なんだけど…。あ、時の政府って言ってたんだよ。なんかおかしいよね』

全部私をからかうための冗談だと思っていて思わず笑いながら話していると、気付けば話し込んでいた二人も私を見ていて、その異様な空気感に笑いが止まる

『ね、ねえ月くん、お二人さん刀剣男士って言うんだって。そういう設定なんでしょう？でも看護師さんがさ、刀剣男士がお見舞いに来てるから審神者かと思ってたって言うのよ。事情聴取で来てるだけなのにね…月くん？』

反応が無くて、気付いたら私だけしか話してない状況に困惑して立ったままの彼を盗み見た

見たことがないような青ざめた顔をして口を真一文字に引き結んで立っている

いつも様々な表情を見せてくれる彼が、だ。

何かまずいことをいってしまったのだろう。じゃあ何がだめだった？

いつもの世間話のつもりで、そんな顔させたかったわけじゃなかったのに。