○ ページ6
その途端にフラッシュバックするあの日の記憶
いや、あの日だけじゃない。あの日だけじゃなかったはず。
もっと以前から…?
『嫌ッ!』
振り払おうと腕を大きく動かしたせいで点滴が倒れて痛みが走る。
裂かれるような痛みが腕に走って限界を迎えた私の涙腺が決壊した。
山姥切「落ち着いて!私達は何もしません!水心子、手を離せ」
水「わ、私はただ、擦ってはいけないと思って」
掴まれた手の力が抜けるのを感じて慌てて腕を引き抜く。
そのまま点滴の針を腕から取って逃げなければと思うままにベッドから転がり降りた。
食事を巻き込んでしまったせいで、すっかり冷めてしまった味噌汁やおかずの煮汁が着ていた浴衣に染み込んで体が震える。
二人が何かいいながら近付いてくるが、もうなりふり構っていられなかった。
今はとにかく人が怖い。
蘇ってきた記憶が忌まわしい。
這うように入り口を目指していると、私の希望を断つように新たな来客者が扉を開けてしまった。
怖い。
受けた頭の傷がズキズキと痛む。
?「A!!」
聞き慣れた声に顔を上げれば苺を持った月君が居る。
『月くん!!たすけて!!』
月「何があった?大丈夫だから落ち着け。俺が居る」
『ずっとがいい!!ずっといてよ!!』
月「分かったよ。許可貰ってくるから。絶対そばに居る。だから落ち着け」
抱きしめてくれた月くんから苺の匂いがふわっと香る
服に顔を埋めて思い切り息を吸い込むと月くんの匂いがしてとんでもなく安心した
月「おい、ナースコール押せ」
山姥切「あ、ああ」
水「なんでここに…!」
月「喋るな。黙るか出ていくかどっちか選べ」
月くんは私を離さないでいてくれた。きっと味噌汁なんかの匂いがして濡れてしまっているのに。
力強い腕に守られながら落ち着こうと深呼吸を繰り返す。
少し冷静になってきたからか、今の自分の失態を振り返って顔が火照る。気付いたら涙も止まっていた。
「失礼します!Aさん、腕見せてくれる?大丈夫だからね」
すぐに来てくれた看護師さんに優しく声を掛けられて、月くんはようやく腕の力を緩めた。
パニックになった名残で少し不安が残るので縋ってしまいそうになったが、ここはグッと堪えて素直に腕を差し出す
案の定出血しており、私は床に座り込んだまま応急処置を受けることになったのだった
140人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:名無しさん | 作成日時:2023年4月2日 13時