ストーカーはブラック審神者 (ページ14)

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足を止めてうつむき加減で正面に向き直ると、声を上げた彼は腰を折って私の顔を覗き込んでくる

逃げるような形で少し後ずさると、視界に入った彼の表情が不機嫌そうに歪められた。

？「ちょっと失礼じゃないかな。先にぶつかってきたのはそっちでしょう？」

『すいません…』

？「せめて顔ぐらいあげてほしいな」

『あの、本当にすいませんでした』

目線だけちらっとあげれば、何故か見覚えのあるコートにギョッとする

驚いて顔を上げると鮮やかな紫色の目が私を睨んでいる。

？「ここは刀剣男士専用の棟。人間の君が何故ここにいる？返答によっては対応を変えさせてもらうけど」

『え、あ、すいません…。あの木の根元に行ってみたくて』

？「この棟に来なくても行けるでしょう？」

『知らなくて、すいません』

彼はため息を一つこぼすと、被っていた帽子を脱いで頭をガシガシと掻いた

こ、怖い。行動から私に対してのイライラが惜しげもなく伝わってくる。

こうなったら引き返そう。絶対にその方がいい。
木は諦めて、次の診察日に看護師さんに別ルートを聞いてみよう。

『気分を害してしまってすいませんでした。諦めて、あの、もう帰ります…』

圧を感じてだんだん声が小さくなる。
もう一度、頭を下げて踵を返すと見えた光景に足がすくんで動けない。

『っあ、』

彼にぶつかるまでにすれ違ったはずの刀剣男士達が棟の入り口で立ち止まって私達を見ているのだ。

野次馬的な感じではなく、感情のこもらない目をして私達を、もしかして私を見てる…？

？「だから人間は来ちゃダメなんだ。分かったかい？」

動けない私の手が後ろから引っ張られて、再び彼に向き直った私は棟の入り口を背によたよたしながらついていくしかなかった。

私の手を掴む彼は、外からの木漏れ日を半身に映しながら颯爽と前を歩いていく。
入院生活のせいで衰えた筋肉が急な運動に悲鳴を上げていて、普通に歩いているだけなのにフルマラソン終盤のような息遣いで必死になって進むしかなかった。

本当は今すぐ足を止めて休んでしまいたいが。

？「なんでそんな疲れてるのさ。走ってもいないのに。貧弱だね」

これには流石にむっとした。
事件前の私ならこれくらいで息が切れたりしないもの。

『入院して、ましたし、ふぅ…ほぼ、寝たきりでした。体力が戻ってない、です』

だから早歩きで息切れてるんですよ。
そう言ってしまおうかと思ってたけど、もう喋れそうにない。
息切れすぎてしんどい