5話※ ページ6
それでも、それでも！！！
震える手に無理矢理力を込めて腰に携えた越前康継を抜いた
そのまま懸命に立ち上がれば失血したからか目の前がチカチカと霞む
あぐりの泣き声を耳にして彼女に覆い被さる佐伯さんに怒りがこみ上げると無我夢中で刀を振りかぶった
振り向いた佐伯さんが目を丸くして仰け反ると同時にあぐりの腕を掴んで引き上げると体に鞭打って走る
火事場の馬鹿力とはこの事かと半ば他人事のように思いながら向かう予定だった方向とは別の道へ進む
腕の外れたあぐりも止まらぬ涙を拭うことも出来ず必死について来て
そんな彼女の佐伯さんによって乱された着物を見てゾッとした
芹沢さんに妾にされぬようにと連れ出したのにこれでは一緒じゃないかと。
喘ぐように息をしながら足を止めずに走るので、謝る事もままならず、俺の視界も霞んでいく
泣くなんて情けないと思いながらどうしてこうなった？と考えても
息苦しさと背中の熱のせいで頭が回らない
あ「ひっ、う…」
『あ、ぐり。あぐり、』
あ「ハァ、は、愛じ、郎様、これは一体！」
『最初から、このつもりで佐伯さんは…』
気付けば朱雀千本通まで辿り着き、二人で足を止めて息を整える
休憩など優しいものではなく、体を負傷したからガタが来ているのだと感じた
あ「なぜ…幸せになりたい、だけなのに…」
『すまない。俺の判断で』
あ「愛次郎様は何も。何も悪くない」
動揺しているのか彼女が浮かべた笑みは酷く強張っていた
乱された襟元や力を失ってだらりと垂れる腕が痛々しい
そこに触れぬ様にと抱き寄せて背を摩れば、小さな嗚咽を漏らして泣き出した
俺の背を気遣ってか腰の辺りに片腕を回して縋り付いてくる彼女を
彼女だけでもなんとか逃がしてやりたい
『あぐり、良く聞いておくれ。この先、朱雀千本通を抜けて家屋がある方へ逃げるんだ。佐伯さんが追いつかない様に俺が時間を稼ぐ』
あ「嫌や！何言うてるの？！」
『俺は、お前だけでも助かって欲しい！！生きてほしい！！』
あ「私の気持ちはどうでもええん？愛次郎様がいないと意味があらへんのに！！」
彼女が俺の前では絶対に出さなかった京弁で捲し立ててくる
不謹慎だが可愛いと思いながらまた泣き出した彼女の涙を拭った
佐伯「感動の抱擁はそこまでだ」
後ろに迫った気配に迷わずあぐりを押しのけると身を翻した
間に合わず、片耳がやられてぶらぶらと肉片が動くのを感じながら
抜き身のままの越前康継を構えた
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名無しさん(プロフ) - 伏ぺいさん» コメントありがとうございます。コメントの返信が遅れてしまい申し訳ないです。嬉しいお言葉すごくありがたいです！更新できるよう頑張りますので完結まで見ていただけたら嬉しいです！ (2020年5月16日 19時) (
レス) id: 7c9fe9a3cd (このIDを非表示/違反報告)
伏ぺい - 主人公とみんなの会話のドッチボールがとても面白いです！ゆっくりでいいので更新待ってます！ (2020年5月1日 16時) (レス) id: 0c71642d46 (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん(プロフ) - ゆりさん» コメントありがとうございます。長らく更新できておらず、またコメントの返信も遅くなってしまい申し訳ないです。私生活が少し落ち着いてきましたのでこれから更新していきたいと思います！ (2020年4月10日 13時) (レス) id: 7c9fe9a3cd (このIDを非表示/違反報告)
ゆり - 面白かったので更新再開を心待ちにしております (2020年3月9日 12時) (レス) id: aea964e9bf (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん(プロフ) - 架印�靴気�» コメントありがとうございます！実は私も新撰組が大好きです…！刀剣乱舞ベースですが出来るだけ新撰組を多めに話に絡めていくので今後の登場人物や回想シーンを楽しみにしていただければと思います！ (2019年5月18日 19時) (レス) id: 7c9fe9a3cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：名無しさん | 作成日時：2019年3月10日 1時
