1話 ページ2
蝉の声が騒がしい京の七月末日
カラッと晴れた夏晴れの空の下、新撰組屯所内のある一角で二つの影が向かい合っていた
『ああ、佐伯さん私はどうしたら…』
佐伯「まあまあ、落ち着け佐々木。」
暑さの為かはたまた別の訳からか目を見張るほどの美男子・佐々木愛次郎は顔を青くさせて、
目の前で腕を組んで眉を寄せる隊士・佐伯又三郎に問いかける
佐伯「しかし、芹沢局長があぐり殿を妾(*愛人)にとはなぁ。」
『やはり直接お断りした方が…』
佐伯「いや、そうすれば激怒したあの方にお前が討たれてしまうやもしれん。」
埒のあかない話にどうすればと半ば絶望した心情で頭を抱えた
つい先刻、急に呼び止められ耳にした話は佐々木にとってはとても信じられないものだった
その内容というのも、佐々木の恋仲である町娘のあぐりを偶然見た新撰組局長の芹沢鴨があの娘を妾にと所望しているという話で
日頃から世話になっている佐伯の話は嘘だとは思えず、疑うよりも先にどうしようという感情で頭がいっぱいになってしまった。
佐伯「…よし、俺が一肌脱ごう。明後日の夜、あぐり殿を連れて遠くへ逃げろ。」
『しかし、脱走は局中法度です！貴方も手助けしたとなればどうなるか。』
佐伯「なに、気にするな。弟のようなお前の為ならと思えば上手くやるさ。」
撫でるように優しく肩を叩かれて
どうしてもあぐりを守りたいという気持ちから渋々承諾した
その様子に満足気に頷くと佐伯は隊務に戻ると言って背を向けて去っていく
不意に気が抜けてしまってまだ佐伯の手の感触が残る肩に手を添えたまま、何をするでも無く立ち尽くした
不安と希望に踊らされた心音がバクバクと身体中で響く
じわじわと溢れてくる汗は暑いからか焦りからか
己の頬を伝って首筋を流れていく汗を拭う事もせずに目を伏せたまま溜息が溢れた
「なーにやってんだよ、色男！」
急に後ろから掛かった声に大袈裟に肩がビクついて振り返ると
十番隊組長の原田左之助が竹刀を肩にかけて立っていた
『原田組長、』
原「そんな真っ青な顔して、気分でも悪いのか？日陰に行くぞ。倒れそうだ。」
動かない己の腕をとって歩き出す原田の背を見ながらぼんやりと明日以降は会えなくなるかもしれないと思った
じわりじわりと決意が固まってきている、隊を抜けるという選択肢が急に現実味を帯びてきた
こうして手を引かれて歩くのも最後かもしれないと思うと胸の辺りがグッと苦しくなる
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名無しさん(プロフ) - 伏ぺいさん» コメントありがとうございます。コメントの返信が遅れてしまい申し訳ないです。嬉しいお言葉すごくありがたいです！更新できるよう頑張りますので完結まで見ていただけたら嬉しいです！ (2020年5月16日 19時) (
レス) id: 7c9fe9a3cd (このIDを非表示/違反報告)
伏ぺい - 主人公とみんなの会話のドッチボールがとても面白いです！ゆっくりでいいので更新待ってます！ (2020年5月1日 16時) (レス) id: 0c71642d46 (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん(プロフ) - ゆりさん» コメントありがとうございます。長らく更新できておらず、またコメントの返信も遅くなってしまい申し訳ないです。私生活が少し落ち着いてきましたのでこれから更新していきたいと思います！ (2020年4月10日 13時) (レス) id: 7c9fe9a3cd (このIDを非表示/違反報告)
ゆり - 面白かったので更新再開を心待ちにしております (2020年3月9日 12時) (レス) id: aea964e9bf (このIDを非表示/違反報告)
名無しさん(プロフ) - 架印�靴気�» コメントありがとうございます！実は私も新撰組が大好きです…！刀剣乱舞ベースですが出来るだけ新撰組を多めに話に絡めていくので今後の登場人物や回想シーンを楽しみにしていただければと思います！ (2019年5月18日 19時) (レス) id: 7c9fe9a3cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：名無しさん | 作成日時：2019年3月10日 1時
