116話 ページ39
7位になっても私達の名前は呼ばれない。
崩れ落ちそうになる足をなんとか持ちこたえて続きを待つ。
大丈夫、出場枠はあと2校もあるんだから。
大丈夫…だよ、ね。
痛いほどに握りしめていた拳を緩めて顔の前に持ってくる。
指を絡めて額に軽く押し付けてその時を待った。
…おねがいします。
ずっと、頑張ってきた。
私の、私達の夢の箱根駅伝。
最初で最後のチャンスだから。
だから、どうか…！
拡声器を持った学生はちらりとメモを見てひと呼吸をおく。
その口から紡がれた大学の名前を聞いた時、私は勢い良く顔を上げた。
「8位 寛政大学。」
あたりが静まり返る。
空耳、かと思った。
拡声器から届いた名前は間違いなく私達の大学の名前。
カケル君とキングは抱き合い、ムサ君と神童君はその場にへなへなと腰を下ろした。
ニコ先輩とユキ君はハイタッチをしていて、双子と葉菜ちゃんはカケル君の体を叩き続けた。
きーくんは、珍しく前回の笑顔で両手を空に掲げてカケル君をもみくちゃにしている。
喜んでいるみんなを眺めながら、信じられないと呆然としていた私は不意に誰かに揺さぶられた。
はっとして揺さぶってくる相手を見るとそこには瞳に涙をためてぐちゃぐちゃな笑顔を向けてくる王子がいる。
『…ふふ、おめでとう王子。』
「何いってるんですか！！
あーちゃん先輩もでしょ!?」
夜ランニングマシンで走っといてよかった
なんて、あの頃の王子なら絶対に言わない言葉を言うもんだから思わず私も笑ってしまう。
頬に手を添えて、零れ落ちる涙を優しく親指で拭ってあげた。
『頑張ろうね、箱根。』
「もうあんな思いしてまでは走りたくないですけど…
頑張ります…」
帰ったら漫画よみまくるぞー、と走る前より意気込んでいる王子に苦笑いを浮かべる。
しゃがみこんだ王子の頭を撫でながら掲示板の方に目を向けた。
寛政大学の合計タイムは10時間16分43秒
10人平均の順位は86位。
7位の大学は実質的には10時間17分03秒だったため、タイム的に見れば私達の大学は7位相当のタイム。
ハプニングがありながらも初めての挑戦でここまでの好成績で終えることができた。
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マナミ(プロフ) - 面白いです！主人公が灰二さんにベッタリとか好き！ユキ君達との仲の良さ、王子も相談に乗ったりで素敵！灰二さん、主人公の気持ちに…困ってる不安も気づくべき！ユキ君達も主人公に惹かれt((更新頑張って下さいね！無理はしないで下さいね… (2020年7月31日 2時) (
レス) id: f5569c460a (このIDを非表示/違反報告)
采音(プロフ) - 続き気になります！ゆっくり更新していただけたらいいなぁって思っています！ (2020年6月28日 7時) (レス) id: 93bfdfd3ea (このIDを非表示/違反報告)
りんね - とっても面白いです！ (2020年3月18日 16時) (レス) id: 48ddc9040e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藍緒(アオ)
| 作成日時：2019年9月26日 0時
