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90話 ページ12

『…さむ。』






外に出た途端に吹きつけてくる冷たい風。





はぁ…と息を吐いてもまだ白くはならないけれど、顔に容赦なく当たる風はかなり冷えている。


おまけに洗濯物をガンガンと冷たくされてしまうから、本当にこれからの時期の洗濯物はつらい。







『早く干して、部屋にもどろ…』





まだ暖かいであろう布団に入り込んで毛布にくるまって、ご飯までゆっくりしたい。


洗濯物を干したあとの束の間の楽しみ。





よし。

小さく意気込んでまだ湿ってる洗濯物に手を伸ばす。



ぱんぱんと洗濯物をはらってシワを伸ばし、物干し竿に掛けていった。



人数が多いからその作業を何度も何度も繰り返して、全部干し終わる頃には日差しが射してくる。


家と家の隙間から射し込む太陽の光は冷えた私の体を暖めてくれた。



その光に反応して寝ていたニラも起きてぐーっと小さな体を伸ばす。




『おはようニラ。

今日も可愛いね。』




冬毛が生えはじめてもふもふ度が増したニラは可愛い。



わふ。なんて言って飛び跳ねてくるニラを受け止めて撫でくりまわした。





『私の癒やしはお前だけだよー。
ニラー。』




なんて言っても人の言葉は通じないだろうけど。






ニラとの挨拶を終えた私は玄関を静かに開けて寮の中に戻った。


玄関の真上にある双子の部屋から数人の足音と声が聞こえてくる。



そろそろジョッグの時間だから準備するために起きたのかな。




昨日あれだけ飲んでたのに。


アルコールちゃんと抜けてるのかな…


不安になりつつも、私は洗濯物のかごを置くために洗面所に向かう。


冷たくなった手を温めて外に出た時、丁度きーくんが顔を洗いに来ていた。



私の姿を見つけると綺麗な目を細めて「おはよう」って挨拶をしてくる。






…ああ、ほんっとうにかっこいいな。



その笑顔に、幾度となく胸を高鳴らせてきた私は今日も笑顔に心を揺さぶられる。




嫌な思いを沢山しても

散々に傷ついても

それでも想い続けてしまうのはこの笑顔と優しさがあるから。




私がツライ時はそばで寄り添ってくれて、毎日温かいごはんを作ってくれて、何かあれば一番に心配してくれて。



ずるいんだよ。

何から何まできーくんはずるい。





『おはよう。
きーくん。』



そして今日も、押しつぶされそうな心を隠して挨拶をした。

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設定タグ:風が強く吹いている , 清瀬灰二 , 箱根駅伝   
作品ジャンル:恋愛
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マナミ(プロフ) - 面白いです!主人公が灰二さんにベッタリとか好き!ユキ君達との仲の良さ、王子も相談に乗ったりで素敵!灰二さん、主人公の気持ちに…困ってる不安も気づくべき!ユキ君達も主人公に惹かれt((更新頑張って下さいね!無理はしないで下さいね… (2020年7月31日 2時) (レス) id: f5569c460a (このIDを非表示/違反報告)
采音(プロフ) - 続き気になります!ゆっくり更新していただけたらいいなぁって思っています! (2020年6月28日 7時) (レス) id: 93bfdfd3ea (このIDを非表示/違反報告)
りんね - とっても面白いです! (2020年3月18日 16時) (レス) id: 48ddc9040e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:藍緒(アオ) | 作成日時:2019年9月26日 0時

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