248話 ページ9
いつもならなんてことない渚君の絞め技でも、猫だましの影響が残ってる俺には酷な武術だ。
腕に力が入らない。
藻掻いても、離れる気配がない。
腹を殴っても、今の俺の柔いパンチでは持ち堪えられてしまう。
マジヤバイ。
このままだと、
意識も朦朧としかけてきた。
辛うじて自分の精神力で意識を保ってるけどそれもいつまで持つか分からない。
残っていた力で腕を動かし、打開策がないか周囲を探る。
なんとかこの状況から抜け出したい。
渚君の気をそらせられれば、何だっていい。
手を必死に動かすけれど聞こえてくるのは落ち葉同士がカサカサと擦れ合う音ばかり。
時々手に当たる砂利が、自分の手を少なからず傷つけているのも無視して探し続ける。
流石に都合よく木の棒なんて落ちてたりしないよな…
でも、諦めない。
何としてでも、俺が勝つ。
俺は渚君に抵抗しながら辺りを探り続ける。
すると、俺の手に何か硬いものが触れた。
その途端に妙に頭が冷静になって、そっと触れた物を持ち上げる。
奇跡的に俺の近くに落ちていたのは、1つのナイフ。
刃先には俺達のチームカラーでもある、赤色の液体が塗られている。
俺の、ナイフだ。
さっき渚君に弾かれてしまった俺のナイフ。
これを、渚君に刺せば俺の勝ちだ。
俺の心を何度もざわつかせて、暗殺における天性の才能に恵まれている渚君にようやく勝てる。
勝利が見えたからか、意識が少しだけハッキリとしてきた。
左手に持つナイフに渚君はまだ気づいていない。
ゆっくりと持ち上げて、あとは振り下ろすだけ。
【僕が喧嘩？
怖いから多分一生できないよ。】
【まぁ、やらなきゃ死ぬってんなら別だけど。】
あの頃の、まだ仲がよかった記憶が頭をかけ巡る。
あんなこと言っていた渚君が、今は俺をころそうと決め技かけてきてるんだ。
必死になって力を込め続ける渚君を横目で見る。
…ごめんね、渚君。
そして俺は、ナイフを手放した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1154人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まるごと林檎。 - 藍緒(アオ)さん» 優夜さんの言っているのは下から数えて12行目だと思われます！！これからもがんばってくだせぇ！！ (2019年12月21日 9時) (
レス) id: dd1ab80eca (このIDを非表示/違反報告)
藍緒(アオ)(プロフ) - 優夜さん» 優夜様。ご指摘ありがとうございます。156話を見たのですが（私がちゃんと読めていないのか？）見つけられなかったので見つけ次第直させていただきます！ご報告ありがとうございます。 (2019年12月13日 7時) (レス) id: dccc59a57c (このIDを非表示/違反報告)
藍緒(アオ)(プロフ) - kameさん» お返事遅れて申し訳ございません。心配していただきありがとうございます。少し長引きましたが元気です！kame様もお体にはお気をつけて… (2019年12月13日 7時) (レス) id: dccc59a57c (このIDを非表示/違反報告)
優夜 - あの、これの4の156話の照明の漢字間違えて、こっちの証明になってると思います。この話とてもいい話です。 (2019年11月30日 12時) (レス) id: c6fd1fccac (このIDを非表示/違反報告)
kame(プロフ) - 体調大丈夫ですか？？お大事にしてください……！ (2019年10月12日 15時) (レス) id: 29052aa6a9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：藍緒(アオ)
| 作成日時：2019年7月24日 23時
