112話 ページ36
清春が重い腰を上げたのは多々良君が賀寿と一緒に家の中に駆け込んで行ったあとの事だった。
今起きたばっかな筈なのに目はぱっちりと開いていて、いつもみたいにボーッとしていない様子を見ると多分起きて私達の会話を聞いてんだろう。
起きてたなら話に入ってくればいいのに。
そう言おうと口を開いた瞬間、私の体は清春の大きな胸に勢い良く引きずり込まれる。
衝撃で『うっ…』なんて女なのに可愛くない声が出た。
その声は清春に抱きしめられてたから清春の胸の中に消えていったんだけど。
『ちょ、どうしたの！清春？』
私の体に回されている手を無理やり引っ張って清春の顔を覗きこむ。
清春は顔を見られたくないのか私からそらすばかりで見えそうにもない。
それでも諦めないで清春の頬を両手で掴み私の方に向かせる。
『どーしたの。
言ってくれなきゃわかんない。』
猫みたいに目尻が上がって睫毛が長くて。
いつもは眠そうだけど自信に満ち溢れてる目はなぜか今は寂しそうで。
そんな清春の目を見たことがない私は少しだけ動揺する。
そんな私を知ってか知らずか、清春は自嘲気味に笑うと私の肩を軽く押した。
急なことで反応できなかった私は重力の力を借りて昼寝していた椅子に倒れ込む。
すぐに起き上がろうと腕に力を入れたけどそれは清春によって阻止された。
そしてまた、離さんと言わんばかりに抱きしめられる。
「…いいな。」
『んん？』
「仲いいな。」
富士田と。
ぶっきらぼうに。
拗ねたように。
少し怒ったように。
私の背中辺りでぼそりと呟かれた言葉はしっかりと私の耳に届く。
私だってそこまで鈍感じゃない。
清春の表情と言葉を聞けばすぐにわかる。
『ふふ、嫉妬した？』
「…」
無言は肯定と同じだよ。清春？
おまけに隠しているようで隠せていない耳元が真っ赤に染まってる。
また私の知らない清春の一面が見れた。
私しか知らない、清春の顔。
『大丈夫だよ。
私が一途なの、知ってるでしょ？』
「うるさい。」
くすくす笑いながら背中越しに怪訝そうな顔をしながら私を睨んでいるであろう清春を思い浮かべる。
その後もからかい続けたら痺れを切らした清春に深い口づけを落とされた話はまた別の機会に。
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雅 - 昨日読み始めて気づけばこんなところに！ってなるぐらい面白いです！自分は専門学生ではありませんが、テストや実習は大変ですよね…。自分も勝手ながらですが応援しています！！頑張ってください！ (2018年9月25日 16時) (
レス) id: 71fc5da111 (このIDを非表示/違反報告)
藍緒(アオ)(プロフ) - ななしさん» コメントありがとうございます！楽しく読んでいただきとても嬉しいです(T_T)実習の合間に更新できればと思いますが…頑張ります。笑。応援ありがとうございます！ (2018年9月10日 0時) (レス) id: dccc59a57c (このIDを非表示/違反報告)
藍緒(アオ)(プロフ) - 結さん» コメントありがとうございます！テスト疲れました…更新を長い間待っていただき本当にありがとうございます。 (2018年9月10日 0時) (レス) id: dccc59a57c (このIDを非表示/違反報告)
ななし - いつも楽しく拝読しています。実習頑張ってください！勝手ながら応援しています！！ (2018年9月9日 20時) (レス) id: 5b7e532371 (このIDを非表示/違反報告)
結 - テスト大変ですね。私も今日テストだった……。更新お待ちしてます！！頑張ってください！！！ (2018年8月29日 22時) (レス) id: 280831b4cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：藍緒(アオ)
| 作成日時：2018年4月24日 15時
