5.繋がり ページ5
「ど、え、どうしたの?」
梅雨でもないのに毎日のように雨が降る今日この頃。傘も差さず家の前で座り込んでいるイザナに、Aは動揺しながら声をかけた。
長い睫毛はいつも以上に顔に影を落とし、何かを堪えるように口を閉ざすびしょ濡れのイザナの手を引いて仕方なく家に招き入れる。
タオルをイザナに被せたAは寒くないようにと毛布も上から被せる。服は申し訳ないがそのままでいてくれ。
暖かいお茶を用意して三角座りで踞るイザナの隣に座り、一緒に持ってきたチョコレートを一粒手にとってイザナの口に放り込んだ。
電気の点けてない部屋は暗く、静寂も相まって少し微睡んだ瞬間、隣のイザナがゆっくりとAにもたれ掛かった。
「何かあった?」
そう問えば、ずっと口を閉ざしていたイザナが小さな声で話し始めた。
「オレと真一郎は血が繋がってないって。家族じゃなかった。エマも妹じゃなかった。血の繋がった家族なんて、最初から居なかった…。」
いやおっも。話が重い。鶴蝶と喧嘩でもしたのかと思ってたら全然違った。誰だよ真一郎とエマ。
「真一郎も知ってた。知ってて、オレの事を弟って言って、バイクに乗せてくれて、いろんな場所に連れてってくれたのに、なんでだよ…。」
「その人の事は嫌い?」
「嫌いじゃない。」
ぐずぐず言ってた癖に鼻声で即答する辺り、真一郎が本当に好きだということが伺える。
「じゃあそれで良いじゃん。」
「よくない。血が繋がってないならあいつは兄貴じゃない。」
どうやら血縁関係は大事らしい。
「贅沢だね。」
「は?」
「血が繋がっていても子を捨てる親なんていっぱい居るんだよ。」
「…うん。」
「真一郎さんが血が繋がってないことを知っててイザナくんを弟って言ってくれてるなら、本当にイザナくんが大事なんだなって。こんなことって滅多に無いんだよ。すごく贅沢。」
「ぜいたく…真一郎、オレが大事なのかな。」
「多分イザナくんが思ってる以上に大事だよ。」
「真一郎めっちゃオレのこと好きじゃん。」
「自分が思ってる基準高いな?」
ペットを家族と言っている人達もいるんだから家族の定義なんて曖昧なのだろう。結局はそんなものである。
イザナはお茶を飲み干し立ち上がった。
「真一郎に謝ってくる。」
「はーい、気を付けてね。」
Aは元気に駆け出していくイザナを見送って部屋に戻る。
「…傘を貸せば良かったな。」
というか謝らなければならない事をしたのか。何をしたんだあいつ。
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杜綦(プロフ) - 同じく面白くて何回も見直してみてしまいました! (2021年12月18日 12時) (レス) @page12 id: d8bb1d3459 (このIDを非表示/違反報告)
ココア(プロフ) - え、面白すぎて一瞬で読み終わりました。え、面白すぎて一瞬で読み終わりました。(大事なので2回言いました。) (2021年12月9日 15時) (レス) @page11 id: cf75b8a6ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朱魏 | 作成日時:2021年9月11日 9時