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Aさんの歩くスピードが、遅くなった。
「...足、大丈夫ですか？」
「あ、はい！大丈夫です。」
といいながら、足を少し引きずっている。
「...大丈夫じゃないですね、これは。」
「ごめんなさい...慣れない格好で来てしまったので。」
「いやいや、そんなんわかっててこんなに歩かせてしまってすみません...じゃあ、今日はこれで帰りましょう。」
「え、あの...」
「俺、タクシー呼びますわ。」
スマホでタクシーを手配する。
「庭園の前まで来てくれるみたいです。」
「...ありがとうございます。」
「じゃ、そこまでは...はい！」
「へ？」
Aさんが固まっている。
「だからもう無理しない！ほら、俺におんぶされる！」
「え、いやいやいやいやそんなこと、」
「大丈夫、意外に誰も気にしないから！恥ずかしくないって！」
「いえいえそんなご迷惑...重いですし。」
「あ、これでも俺、鍛えてますから！ほら、タクシー来ちゃう！！」
「...本当に、すみません。」
俺の背中に、Aさんがゆっくりとつかまった。
庭園を出ると、まだタクシーは来てないようだった。
「...本当にいろいろとありがとうございました。」
「いやいや...あの、Aさん。」
「はい？」
「これって、今ここで言ってもいいんかいなぁ...」
「なんでしょう？」
「ま、いいか！あのですね、この後のことです。」
「あ...」
「俺は...また、会いたいです。だから...結婚前提！ということで、これからも、会っていただけないでしょうか？」
俺を見つめていAさんは、小さく頷いた。
「...こちらこそ、よろしくお願いいたします。」
「...はい！じゃあそういうことで！照さん、あ！仲人さんにも伝えます！！」
連絡先を交換し、タクシーに乗るAさんを見送る。
「...じゃ、また。」
「はい...また。」
...俺にも春、来そうや。
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作者名：Momanao | 作成日時：2021年2月8日 22時
