43 ページ44
「ごめん...遅くなって。」
大先生が今にも俺に襲いかからんとしていたとき、救世主が現れた。
「...龍斗さぁーん(泣)。」
「ハイハイ森口さん、アナタ少し飲みすぎましたな。」
「は、全っ然飲み足りませんけど？！龍斗くん、康二がこんなクソつまらんオトコだったとは思ってなかったわよ！萌のやつ、後輩にどんな指導してんのよ！」
さすが大学からの付き合い、大先生の扱いにも慣れている様子の龍斗さん。
「指導って...萌が教員やってること自体奇跡だって森口さんも分かるでしょ？向井先生には助けてもらってばかりなんだから...さぁ、帰ろ？」
「嫌だ！まだ飲む！」
「源が"のりちゃんまだかなぁ？"て言ってたよ。今日は一緒に寝たいって。」
「うー...じゃ、帰る。」
荷物とヘロヘロの大先生を抱えた龍斗さんが、俺に声をかける。
「こんなときに...向井先生、災難だったね。」
「いえいえ...大先生にガツンと言われて...ますます落ち込みましたわ。」
「え、そうなの？ゴメン！！萌も同席させといたらよかったね。」
「ウソです...みんな気つかってなーんも言ってくれへんから、返ってよかったかも(笑)。」
その後、お代を払おうとする龍斗さんに丁寧に断りとお礼を言い、俺も店を出た。
暗い部屋に戻り、家着に着替えひと息つく。
...結局缶ビールを1本開けてしまった。
スマホを見る。
あの日以来、音沙汰のないLINE。
スクロールしていくと、デートの度に俺が撮ったAちゃんが現れる。
笑った顔、驚いた顔、何かを見つめる横顔。
俺と一緒に写る、嬉しそうな顔。
...藤棚の前に立つ、少しはにかんだ表情。
てんとう虫を逃がして、にっこり笑った和服姿がええなぁって、
また会いたい、もっと話したい...
この子と、ずっと一緒におりたいって。
俺は一体、Aちゃんの何を見てきたんやろ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 19人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Momanao | 作成日時：2021年2月8日 22時
