12 ページ13
店をあとにする。
「ご馳走様でした。美味しかったです。」
「そう？よかったです！お腹いっぱいになりました？」
「はい！大満足です。」
「それじゃ...」
「はい、帰りましょうか。」
え？
もう、帰っちゃう？
思わずコケそうになる。
いやいや今日は初デートだし！
Aさんは奥ゆかしい人だからこれで帰るのもわかるけど！
「じゃあ送りますよ。」
「ありがとうございます...じゃあ駅まで、いいですか？」
「駅？」
「はい。なにか？」
「いやいや！じゃあ駅まで。」
すっかり夜になった街を歩く。
「そういえばAさん映画好きなんですよね？どんなの観るんですか？」
「あ、はい...えっと...なんでも...あ、強いていえば、邦画が多い、かも。」
「そうなんや。まぁ洋画は字幕を追っかけるの結構大変ですよね。」
「あ、それもそうですね(笑)。」
「じゃあ次は、映画観に行きましょう！面白そうな邦画！」
「はい、そうしましょう...楽しみだな。」
俺の隣で歩くAさんが、この前よりずっと近くに思えて、愛らしく思えた。
「...Aちゃん、て呼んでもいいですか？」
びっくりして俺を見たが、途端に笑顔になった。
「はい、もちろん。それから敬語もナシで(笑)。」
「はい！あ、敬語はAちゃんもやめてや？」
「あ、それもそうだ...すみません。」
「だからそれ！」
「あ、はい...いやいや、うん、努力、し...てみる。」
「よろしい(笑)。」
駅に到着。
駅前には若者たちがたむろしていた。
「あ、アイツら高校生やな...おい、お前ら何しとんねん。」
「は？お前誰だよ。」
「は？N校の向井や。」
「知らねーし。」
「は？知らんて...俺もまだまだやな...てかはよ帰れ！親御さん心配しとるぞ！」
「うざ！なんでN校の向井に言われなきゃなんないの？関係ないじゃん！」
「N校でもどこでもええねん！俺は唯一無二の高校教師やからな！お前らみんな俺の生徒や！」
「訳わかんねーよ。わかった！向井がうざいから帰るべ。」
「気をつけて帰れよ！」
学生たちを見送り、ハッとして振り向く。
「ごめん！放ったらかしにしてしもて。」
「いえいえ、唯一無二の高校教師だったなんて初耳(笑)。」
「あーまたバカなことを...」
「ううん、そんなことない...じゃ、時間なんで。」
「うん、またね。」
「...お休みなさい。」
構内に消えるAちゃんを見送った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 19人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Momanao | 作成日時：2021年2月8日 22時
