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龍斗くんは、しっかりと右手で私が立ち上がらないように止めていた。
そして左手に握りしめていたのは...
バキバキに割れたプラスチックグラス。
そして既に、割り箸が何組もへし折られていた。
おぉー...これは...
龍斗くん...ずっと我慢してたんだ。
すぐに噛みつきそうになる私をなだめながら、ずっと。
そうだよね、私より怒るよね、私なんかよりもっと悔しいよね。
龍斗くんの大切な人が、こんな酷い目に遭ってるんだから。
「あ...大丈、夫？」
「へ？...あ！！」
龍斗くんが自分の左手を見て立ち上がると同時に、右手がそびえ立つ皿の壁に当たり崩壊。
「うわ！！」
「あーごめんなさい！！」
ガラガラと大きな音を立て散らばった皿を拾い集めながら、何事かとやってきた店員さんに謝りながら慌てふためいている私たちを横目に、瑞稀さんたちは席を立った。
去り際、瑞稀さんと目が合ったような...気がした。
「ご迷惑をおかけしてすみませんでした！コップまで割ってしまって...」
「いえいえ、もう古かったからヒビが入ってたんだと思います。お客様にケガがなくて何よりでした。またお越しくださいませ。」
店を出て、トボトボと歩く。
「...ごめんね、森口さん。」
「なんで龍斗くんが謝るのよ。私こそ自分の感情で動いてしまって...ごめん。」
「いや...当然のことだよ。」
夜空を見ながら、黙って歩く。
「でもこのこと、Aに話す。できるだけ早くきちんと話す。」
「うん...それが一番なんだろうけど。」
「けど？」
「アイツ、ちゃんと話聞くかな？現実をしっかり受け止められるかな...それも北斗さんが原因だなんて、ショック受けすぎておかしくならないかな...あー見えてブラコンだし、案外打たれ弱いヤツだからな...大丈夫かなぁ。」
龍斗くんが上を見ながら、ボソボソつぶやく。
もしかして...泣きそう？
泣きそうなの見られたくないのかな？
でも...Aのこと、ちゃんとわかってる。
そりゃそうだ。
ずっと近くで見てきてるんだもんね。
「...北斗さんのことは絶対言わない。でもちゃんと説得する。落ち込んだら励ます。」
「森口さんにそうしてもらえるなら助かるよ。」
龍斗くんがやっと笑顔を見せた。
「でもね、」
「ん？」
「私だけじゃ、どうにもならなかったら...そのときは、任せた。」
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作者名：Momanao | 作成日時：2021年1月4日 1時
