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「ねぇ、あの脚本書いたの典子?」

Aが俺の言葉を遮る。

「え、あ!う、うん、森口さん。」

「やっぱり(笑)。あーいう変なシチュエーション?典子しか考えないと思ったんだよね。でもみんなよく協力してくれたね。」

「うん、みんな快諾してくれたよ...龍我くんも猪狩も、それから大昇とリホちゃんと大光は自分たちから協力したいって言ってきてくれた。兄ちゃんも翔太さんも、それからお店のマスターもカンナさんもできることは何でもするって言ってくれたよ...みんな話を聞いて、自分のことのように怒ってくれて...それから、少しでも元気になってくれたらって、Aは1人じゃないんだよって伝えたくて。」

「そうなんだ...みんな、優しいなぁ。」

さっきからケラケラ笑っていたAは、急に上を向いた。

「みんな、優しいよ...私のために、こんな自分勝手な私のために...それに比べて私は何してるんだろ...みんなにこんなに迷惑かけてんのに何にもできてない...ほら、また...あー悔しい!!」

上を向いたまま、両手で顔を隠した。


小さく身体が震えている。
こんなとき、男なら黙って抱きしめるのが王道だとは、重々承知している。

...でも、つい


「ひょっとして...泣いてる?」

「泣いてない!」

「...ホントですか?」

「ホントです!」

「...じゃあその手を離してもいいっすよね?」

「え、いや!嫌だ!!」

無理矢理に顔の手を離すと...泣き顔のAが。

Aの手を握ったまま、しばらく見つめ合う。


「...ごめん、」

「わー!だから泣いてないし!!」

「うわっ!!!」

今度は俺の腕を掴んで自分の顔に押し付けた。

狭い軽自動車の車内。

助手席のAに腕を奪われて、さらに身動きがしにくくなった。


「ごめん...だからごめんだって...ねぇ、腕が痺れてきた、そろそろ離してくれない?」

「いや!龍斗の袖に涙全部吸い取ってもらうから!私が元気になるまで待ってて!!」

「...今しれっと泣いてるって白状したよね...わかりました、早くアナタが元気になるように、俺の元気、あげます。」

「はい...じゃ、遠慮なく...」


これはしばらくかかりそうだ。

掴まれた腕をそのままに、無理矢理シートに深く腰掛けた。

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作者名:Momanao | 作成日時:2021年1月4日 1時

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