44 ページ45
(優太Side)
「痛い痛い!!ごめんなさい!!Aさん、すみませんって!!」
さっきからずっと、Aさんにグーパンチを貰い続けている。
「ホント、そんな冗談、絶対やっちゃダメだから!!」
まだ、怒りが覚めやまらない様子のAさん。
「ごめんなさい。もう叩かれすぎてヤバいです。」
ようやく、手を止めてくれたAさん。
「岸くん、若くて可愛い女の子に"帰らないで"はマジアウトよ。」
「若い?可愛い?ブッ(笑)。」
「...うわー全然反省してないじゃん!!」
再び俺に拳を上げる。
「ごめんなさい!!反省してます!許して下さい!!」
「ダメ!許さない!!」
「お願いしますって!!何でも、言うこと聞きますから!」
「...本当?」
「はい。」
「じゃあ、今度キャッチボールに付き合って。」
「キャッチボール...なぜに?」
「あのですね、今年の夏、高校野球にハマってしまったわけですよ。」
「はー、相変わらず理由がおかしいですね。了解です。俺、中学まで野球してたんで。」
「え、そうなの?」
「はい。だから得意ですよ、キャッチボール。」
「やった!!」
さっきまでの怒りはどこに飛んで行ったのか、すっかりご機嫌になるAさん。
「あ、電車そろそろだから、帰るね。」
「はい。気を付けて。」
駅に向かうAさんを見送る。
"帰らないで"
冗談なわけないじゃん。
本気だったよ。
好きだって告げて、あのままAさんを抱きしめたかった。
ずっと一緒にいたかった。
でも、あんな切ない目で見つめられたら、何もできなくなった。
こうやって冗談にしてしまったのは、俺の精一杯の強がり。
たくさんグーパンチされた体よりも、心の方がよっぽど痛い。
くるりと駅に背を向け、自転車に飛び乗った。
63人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Momanao | 作成日時:2019年9月8日 23時