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(優太Side)

「痛い痛い!!ごめんなさい!!Aさん、すみませんって!!」

さっきからずっと、Aさんにグーパンチを貰い続けている。

「ホント、そんな冗談、絶対やっちゃダメだから!!」

まだ、怒りが覚めやまらない様子のAさん。

「ごめんなさい。もう叩かれすぎてヤバいです。」

ようやく、手を止めてくれたAさん。

「岸くん、若くて可愛い女の子に"帰らないで"はマジアウトよ。」

「若い?可愛い?ブッ(笑)。」

「...うわー全然反省してないじゃん!!」

再び俺に拳を上げる。

「ごめんなさい!!反省してます!許して下さい!!」

「ダメ!許さない!!」

「お願いしますって!!何でも、言うこと聞きますから!」

「...本当?」

「はい。」

「じゃあ、今度キャッチボールに付き合って。」

「キャッチボール...なぜに?」

「あのですね、今年の夏、高校野球にハマってしまったわけですよ。」

「はー、相変わらず理由がおかしいですね。了解です。俺、中学まで野球してたんで。」

「え、そうなの?」

「はい。だから得意ですよ、キャッチボール。」

「やった!!」

さっきまでの怒りはどこに飛んで行ったのか、すっかりご機嫌になるAさん。

「あ、電車そろそろだから、帰るね。」

「はい。気を付けて。」

駅に向かうAさんを見送る。


"帰らないで"

冗談なわけないじゃん。

本気だったよ。


好きだって告げて、あのままAさんを抱きしめたかった。

ずっと一緒にいたかった。

でも、あんな切ない目で見つめられたら、何もできなくなった。


こうやって冗談にしてしまったのは、俺の精一杯の強がり。

たくさんグーパンチされた体よりも、心の方がよっぽど痛い。

くるりと駅に背を向け、自転車に飛び乗った。

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作者名:Momanao | 作成日時:2019年9月8日 23時

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