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家に帰り、彼女の写真が保存されたカメラと
彼女が亡くなった後ご家族にもらった
彼女の写真立てを取り出した
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『向井くんのおかげで、あの子は本当に素敵な最期が過ごせたと思う。ありがとうね。
…これは、ぜひ向井くんが持っていてあげてくれる？』
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彼女が亡くなった後、お義母さんはそう言って
彼女の病室に飾られていた写真立てを渡してくれた
その時は持っているだけでしんどくて
俺は家に着いてすぐ
カメラと一緒に引き出しの奥に仕舞い込んでしまった
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…ずっと、閉じ込めとってごめん
今なら、きちんと向き合える気がするんや
心の中で呟いて、そっと手に取る
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カメラを起動してまず目に飛び込んだのは
あの場所で初めて撮った、彼女の綺麗な横顔だった
俺の心が、大きく突き動かされた気がした
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それから、初めて君の名前を知った日
君が、桜は散り際が1番だと言った日
感謝を伝えて君が泣き出してしまった日
連絡先を聞いた日
病院で再会して、病室に会いに行った日
俺の家でデートした日…
そして最後に、病室で家族写真を撮った日
そこには、弾けるようなとびっきりの笑顔や
遠くを見つめる切ない表情
俺が見てきた全ての君が写っていた
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数々の思い出が蘇ると同時に
温かいものが身体中に流れ出す
君との思い出はこんなにも美しかったのに
俺はずっと逃げ続けてしまってたんやね
ごめんな、A
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作者名：ゆきみだいふく。 | 作成日時：2020年9月12日 19時
