君のいない季節____Koji.M (ページ4)

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俺は心を決めた

祖父に会いに行った翌日

彼女が亡くなってから一度も行っていなかった

あの場所へ向かう

細く入り組んだ道を

一歩一歩しっかり踏みしめながら進んでいった

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「…今年は少し、遅咲きやったんや」

視界が開けたそこには、満開の桜が待っていた

ベンチにいつも座って待っていたはずの君は

当たり前やけど、おらんかった

「……なあ、A」

ぽつり、ぽつり。

自然に言葉がこぼれ出す

「俺、デビュー決まったんや

…俺も少し遅咲きやったけど

でも、Aの支えのおかげで

ついに夢掴めたんや」

初めて、ちゃんと伝えられた気がした

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俺は次の仕事まで、時間が許す限りそこにおった

「…そろそろ行かなあかんかな

また、来るから」

そう呟いて立ち上がり、

ベンチに背を向け歩き出す

その瞬間、ぶわっと強く風が吹いて

俺の肩に何かが舞い落ちてくる

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それは、桜の蕾だった

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____＿_"風が、希望を連れてきてくれたんだ"

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彼女の言葉が思い出され

振り返りベンチに目をやる

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「え…」

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そこに彼女が見えた気がした

桜の木を見上げながら、切なく笑う彼女の姿が。

するともう一度、強く風が吹く

蕾はふわと浮き、どこか彼方へひらり舞っていく

もう一度ベンチに目をやると

もうそこに、彼女の姿はなかった

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「…希望の蕾は、この風に乗って

遠い君のもとへ届くんやろか

………届いとったら、ええなぁ」

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彼女を想えば、胸はチリリと痛むけど

それでもずっと心穏やかでいられた自分がおった