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懐かしい匂いがした
久々に訪れた場所は、祖父母の家
まだ、祖母が生きていた頃
東京で仕事があるたびに
技量、人気、温度感…様々な差を感じては落ち込んで
毎回、沢山のコンプレックスを背負って
やってきていたこの場所
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ピンポーン…
チャイムを鳴らした少し後に出てきたのは
「康二…久しぶりやなぁ」
祖父だった
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祖母のお仏壇の前で手を合わせる
「…きっと、康二が来てくれて嬉しがっとるよ」
「おん、そうやったらええな…」
祖父は仕事熱心な人で
俺がよく来ていた頃は家にいる時間が長くなかったから
祖母ほど関わりがある訳ではなく
また、今日は聞きたいことがあって来たから
少し緊張していた
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俺は祖父に向き直って、改めて言う
「今日は…デビューが決まったこと、伝えに来たんや」
「康二のおかんから聞いたで。
…ほんまにおめでとう、康二」
それは、祝福の気持ちに満ちた
どっしりと心地よい重さを含んだ言葉だった
「……それで、どうしたんや?」
「…え?」
「…浮かない顔、しとるから」
「わかってまう?」
「俺かて、伊達に康二のおじいちゃんしとらんよ」
祖母より共にした時間は少ないと思っていたけれど
何かと俺のことを気にかけてくれていたのだろう
この家でかつて感じたのと同じような温かさを思い出して
胸がじんとする
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「ほんで?どうした、康二」
「おじいはさ、おばあが亡くなった時…どうやって立ち直ったん…?」
そう言うと、祖父は少し驚いた顔をして
それから、ふっと柔らかい視線を下に向けた
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「……立ち直れなんかせんよ」
「…え」
それは、想像していなかった言葉だった
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作者名:ゆきみだいふく。 | 作成日時:2020年9月12日 19時