帰り ページ5
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「…ねえ、お姉さん？俺がさ、御曹司だって知っても変わらず接してくれて、ありがとう」
「えー？なに急に」
「親がね、そういう人ほど大事にしなきゃダメだって」
帰りの車の中、スッキリした顔で天使はそう話す
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あの後、話が終わって部屋から出てきた天使の後ろには
彼のご両親もいた
ベネズエラ人のお父様と日本人のお母様は気品とオーラがとてつもなくて
少しの間、執事たちと過ごして慣れてきたかなと思っていた屋敷の雰囲気も一瞬にして元の荘厳さを取り戻すから
色々と気圧された私は固まってしまった
が、お母様が私のもとに駆け寄ってきて
途端、熱烈にハグをされ
"あぁあぁ、Aちゃん余計混乱しちゃってるから"
と天使に軽く笑いながら言われたりもしたけれど
それから彼のご両親は恐れ多いほどの感謝を
私に伝えてくれた
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「…菊池さんの言う通りだな」
「ん？」
「ふふ、親御さん、とっても良い方たちだったなって」
外国人の旦那さんと長いこと一緒にいて、いくら海外のスキンシップが染みついているといっても
会ってすぐの私をぎゅっと長く抱きしめてくれるお母様
それを微笑んで見守り、どっしりとした声色と流暢な日本語で感謝を伝えてくださるお父様
まずは、私自身から何も説明しないままに彼を預かる形になったことを謝らなければならないと思っていた
それを、こんな形で温かく迎えてくださるなんて。
でもきっと、それだけ天使の気持ちを、言葉を信じているお2人だった
彼がどんな風に私のことを話してくれたのかは分からないけれど
きっと誠心誠意、今までのことを伝えてくれて
親御さんはそれを誠心誠意、受け止めてくださったんだろう
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「なんかさ、久々にママとパパと話して…単純だけど、嬉しかった」
運転しながらもチラリと見える彼の表情は
やっぱりまだまだ10代の子供で
「…そりゃそうでしょ、嬉しくない子供なんていないよ」
愛でたくなるような気持ちでそう言う
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それと同時に、思い出す
「でも、なんかわかる気がするな〜」
「なにが？」
「んー？親御さんの気持ちがさ」
"私たちはどうしてもあの子を過保護にしすぎてしまって…窮屈な思いをさせてきた"
そのお母様の言葉が、耳に残っていた
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作者名：ゆきみだいふく。 | 作成日時：2020年9月21日 16時
