柵を飛び越えた羊 ページ9
旅人は男の人の方をみて口を開いた
「アルハイゼンだ、おはよう。こんなところで何してるの?」
「ああ、おはよう。少し買いたいものがあって降りてきただけだ」
その男の人は私の方をちらりとみて、すぐに視線を旅人に戻した
表情はなくて、見ていて不思議な気持ちになる
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿▶︎
旅人side
「なあ、旅人。オイラたちはガイアに呼ばれて1回モンドに戻らなきゃいけないよな...?」
パイモンが空を平行移動しながら口を尖らしてそう言った
私たちはこの後、1度モンドに戻らなきゃ行けない
Aちゃんの親が見つかっても見つからなくても、スメールで誰かに保護をお願いしようと思いここに来た。
どっちにしろ、私たちの旅は危ないから連れて行けないし...
「...」
黙り込むアルハイゼン、わかるよ...何が言いたいかわかるんだよね....
パイモンが先手をきり、口を開ける
「なっ、アルハイゼン、この女の子ちょーっとだけ保護しててくれないか?」
「それは俺の仕事ではないだろう。」
だよね、と言わんばかりのアルハイゼンの即答
腕を組んで相変わらずの無表情で私の方を見ている
ちらりとAちゃんの方を見るけど、前髪に隠れていて表情が見えない
目の前で話すにはちょっと酷いことしちゃってるな...でもスメールシティで家に泊まり込み出来そうなのってアルハイゼンが適任そうだし...
同居人もいるし(笑)
「ちょっとだけなんだ、な?アルハイゼン」
「オイラ達に着いてくるんじゃあ、危なすぎるしさ...」
パイモンが続けて手を合わせて言う
もしアルハイゼンがダメでも、ガンダルヴァーまで行けばティナリがいるから、匿ってはくれそうだけど...
「...わかった。彼女を保護しよう」
「そこをなんとかって、えぇっ！？」
「なんだ、やめるのか?」
「こっちからお願いしておいてなんだけど...いいの?」
あっさり了承してくれたアルハイゼンに不信感を覚えつつもそういうと、アルハイゼンはむっとした顔をした
「ずっと俺の家に置いておく訳にもいかない子だ。手続きを終えたら然るべき場所に行くだろうからな。少なくとも今の俺の居候よりかは手のかからない」
アルハイゼンはそういいながら、Aちゃんの目の前に歩いてくる
しゃがんで視線を合わせた
「俺はアルハイゼンだ。君は?」
『...A』
なんだか、お兄ちゃんと妹みたいだ
そう思って笑みがこぼれた
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作者名：淵0903 | 作成日時：2023年6月27日 22時
