文句は眼鏡をとってから (ページ3)

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＿＿＿紗凪side

勇気を振り絞って恐る恐る体育館に入ると

そこには広くて大きなコートに

眼鏡をかけた猫背の地味な男の子が

床のモップ掛けを一生懸命しているだけだった。

「…あ、あの。」

モップをかけている男子生徒に

声をかけてみるとハッと顔を上げた生徒さん。

「体験入部、ですか？」

私を見上げてそう言った生徒さん。

私が頷くと私に突然モップを渡す。

床にジャージと眼鏡を置くと

近くに転がっていたボールを拾って

シュートを決める。

そしてこっちを向いて親指を立てる。

爽やかに笑う姿は

オープンスクールで見た

あの人と同じ笑顔だった。

まさかと思って目を見開くと

「聞いてる？」

そんな声が少し遠くから聞こえた。

ハッとしてその人の方を見て

「見てました！」

と、返事をした。

やっと逢えた…。

その気持ちで胸がいっぱいで

涙が出そうになっちゃった。

部室に案内してもらって中に入る。

部室の中には数人の男子生徒がいて

異常なくらい嫌な空気が漂っていた。

「バスケ部へ、ようこそ…。」

いつのまにかまた地味な格好に変わった生徒さんが

椅子に座るように言ってくれる。

部室の中はロッカーが壁際にあって

その前にソファとテーブルが並んでいる。

その奥にはベッドが２つ並んでいて

窓際には学習机のようなものが

数個綺麗に並べられていた。

「…えと、名前は？」

スマホを触ったり鏡を見たり

奥にあるベッドで寝ていたり自由すぎる。

「大葉紗凪といいます。」

軽く礼をすると周りから

刺さるような視線が送られてくる。

「僕は永瀬廉です。じゃあ…メンバー紹介…」

永瀬廉さん。やっと名前知れた。

と、思った瞬間…