◇電脳少年の受難◆*２* (ページ37)

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STAGE９ー２【櫻井】ページ37

俺から教えて欲しいと頼んだのに

話し終わったニノに
言葉をかけることができなかった

なのにニノは
俺達のことを悟ったのか

もう過去の話だから気にしてないと言った

そして、
俺たちにも気にしないでと言うのだ

ニノがいなくなっても
他のみんなは誰も席を外そうとはしない

というより外せないといった方が近いかもしれない

聞いた後から
自分がどれだけ無責任なことをしたのかと後悔する

でもその反面、
聞けてよかったとも思っていた

耳が痛くなるような静けさを破ったのは
意外にも松潤だった

松｢...ニノは、これからも
そいつらから逃げなきゃいけねぇのかな。｣

ボソッと小さく、
だけど静かな部屋に響く低い声は

独り言のように
切なさを混じえて下へと落ちていった

櫻｢...多分、いや
...一生身を隠すしかないと思う。｣

松｢そんな...っ。｣

相｢ニノは...どうしたいのかな…｣

今回の事件も、
逃げだしたときも、

ニノを連れ戻したいと思う科学者は
必ず次も探しに来るだろう

でもそれは、
自分たちの手で捕まえるのではなく
誰かを犠牲にして駒として使う

ニノは同じようにされた人たちの気持ちが
痛いほどわかる

だから、
気にしてないと言ってる本人が
一番気にしてて、泣いている

そんなニノはどうしたいのだろうか。

また、肝心なところを聞き逃してしまった

でも聞いたところで俺達になにかできるのか。

そう問われてしまえば
首を縦にふることは難しい

相葉くんの言葉に誰も反応しなかった。

また沈黙が続く。

智くんの方に目だけ寄越すと
息を深く吸い込み口を開いた瞬間を目撃する

そして、
喉を震わせ唇に音をのせると

息を吸った割には小さめの声と
智くんらしい芯のある声音で

主語のない一言が耳にとどいた

大｢おかえりって笑って出迎えること。｣