ブランク【灰谷蘭】

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＿＿＿＿＿生物学的に、絶対に抗えない。



それは例え、富も名誉も物にした権力者だろうと、多くの人間を犠牲にした殺人鬼であろうと。

過去に戻ることなんて現代の技術で出来ることではないし、タイムマシーンなんてあくまで架空の、想像上のものであって。



だから、過去に戻るなんて当然不可能なことなんだ。
だから、今抱き締められているのは、過去じゃない。




時間にだけ、抗えないんじゃない。
貴方への想いにも、抗えなかった。




ひやり、と左薬指に冷たい感覚が伝う。
そこに煌めくゴールドの指輪。目の前の彼の左薬指にも、同じ物。


貴方との10年間のブランクを埋めるそれは、私を満たして離さない。
私の身体に咲く紅も、指に煌めくゴールドも、何もかも。




側から見たら滑稽で、荒唐で、阿呆らしい。
如何にも歪で、歪んだ私達を世の人間は狂っていると後ろ指を指す。





でもそれが、私の幸せだ。

私が貴方からの愛を肌で感じられることが。
言葉で伝えられて、受け止めることが何よりも。


普通じゃ無いならそれで良い。
異常だと笑われても、理解出来ないと罵られようとも別に構わない。




私が在るべき場所は、此処だから。

私は貴方と言う手錠に繋がれて、存分にこの幸せを味わいたいの。





「A、………愛してる。」


「私も、愛してるよ…………蘭。」





過去も、現在も、未来も全部貴方に捧げるから。

まず手始めに、10年間のブランクを埋め続けようか。




＿＿＿＿＿そしたら、何処までも一緒に堕ちてくれるでしょ？





fin


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