ブランク【灰谷蘭】

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私は少し明るくなった空に過敏に反応した。

＿＿＿＿数十分しか寝ていないはずなのに、………よく寝た様な、気がする。



気が付けばベッドサイドのデジタル時計が未明を指していた。
かち、かち、と時を刻まないデジタル時計はどこか寂しくて、私は掛け時計を異様に欲した。



この特有の痛みと気怠さ、若干飛んでいる記憶。

慣れない広いベッドに、いつの間に消された間接照明。



それでも隣で寝る蘭の姿を目にした途端、鮮明に思い出されて仕方無い。




背中を向ける彼の刺青を昔の様にそっとなぞった。
怠そうに反応する彼。でもその一瞬で私を前から抱き締める。




「……お前さ、本当昔からそれ好きだよなあ。」




目を細めて薄く笑う彼に、また私の知らない印がひとつ刻まれているのが目に入る。




「うん……あれ、……これ、って、」


「あー……あんま良いモンじゃねえから、見んな。」




知っている、このマーク。
そういう世界に疎い私でも知っている、ニュースで見た有名な組織。


“ 梵天 ” ＿＿＿＿日本最大の犯罪組織でありながら、警察ですらその内情を把握できていないと言う。
俗に言う、反社会勢力。


首に纏うその印を触る蘭は、そこに所属している人間なんだと分かった。





「……Aと違って、俺は日向に出られる人間じゃねぇから。」


「そう、かもしれないけど……今私の目の前にいる蘭は、別にそうじゃないもん。」


「怖くねえの？」


「怖かったら学生時代にとっくに逃げてるよ。」




今更過ぎる話題だな、と私達は笑った。


反社会勢力の人間になったと言われて、別に今更意外性を感じる訳でも無い。
昔からそう言う傾向にあるのを知っていて、好きと言う感情に身を任せ、目を瞑って共に過ごしてきた。



そう、全部今更なんだから。




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