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「あ、え、ど、どう、私、す、すみません!!!」
Aは自分が泣かせてしまったのだと思い綺麗に腰を曲げ謝罪をした。
「ふふっ、お嬢ちゃんのせいじゃないよ。…ありがとうね、そんなことを言ってくれる人がいてくれたなんて……私はそれが嬉しくてね」
「A?どうしたの?」
1人慌てている彼女に老婆はその皿を差し出した。
「お嬢ちゃんが貰っておくれよ」
「え…そんな大切なもの…」
「お嬢ちゃんなら、きっと大切にしてくれる。私はそう、信じてるよ」
そんな会話を聞いた母親は不思議そうな顔をしたが、その皿を見ると
「まあ、なんて素敵なお皿なの。太陽に当てるとさらに輝くわね!食卓が華やかになるかしら?」
「わあ!綺麗〜…!お姉ちゃんいいなあ」
「店主さん、おいくら?」
「いいよいいよ、金なんていらないさ」
「え!それは申し訳ないです!一等のお皿なのに…」
店主はAの手を握り
「お嬢ちゃんの気持ちだけで充分だよ。…………大切にしておくれ、何があっても。……きっと貴女の力になるから」
「!!」
そういう店主が一瞬だけ若い妙齢の女性に変わった。
───自分と同じ目の色・髪の色、羽織も色は違えど同じ雪華模様の羽織。
そして───────の黒い服。
Aはその姿から目が離せなかった。
その日の夜、Aは昼間の事を考えていた。
他のものにはなんの反応もしなかった自身の身体が、何故あの皿にだけ反応したのか。
そしてあの店主と重なって見えた女性は誰なのか。何故あんなにも私に似ていたのか…。
「私は、何か、大事なものを忘れているの?それにあの人の言っていた、私の力になるって、どういう事?」
考えれば考えるほど頭が痛くなる。
瞬間コツンという音にAは閉じていた目を開いた。音の出処を探すため部屋を見回すが、窓の外には誰もいない。
「誰?…どこにいるの?」
音の強弱を辿りながら歩くと、ある場所で一際音が大きい場所があった。
そこは化粧台の前。
Aはその鏡の前で息を呑んだ。
鏡に映っているのは──
「起きて!!!」
「私…?」
自分と同じ雪華模様の羽織に学生のような黒い服を着た自分がそこに写って─────いや、それは鏡の中から訴えかけていた。
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作者名:アマネム | 作成日時:2023年10月14日 19時