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Aの背後から音もなく現れたのは禰豆子の兄で同期の竈門炭治郎。湯浴みを終えた直後なのか髪の毛が少しだけ湿っていた。
炭「禰豆子、泣いたのか?」
「急に泣いちゃってね。あ、言っとくけど私じゃないからね!意地悪なことしてないから!」
炭「ははっ、分かってるよ」
炭治郎はAの隣に座り泣き疲れたのであろう、いつの間にか寝ている禰豆子の頭を撫でた。
炭「きっと、Aが母さんに似てるから、思い出して泣いたんだろうな」
「お母さんに?」
炭「うん。俺は人より鼻が利くんだけど、Aと俺の母さんは同じ匂いだったんだ。優しくてだけど強かな心を持ってる」
「そ、そうかな…」
同い年の男子にあまり褒められ慣れていないAは照れくさくなった。
師範の褒め方は犬猫にするのと同じなのだから、尚更だ。
炭「Aは禰豆子が鬼だって、気づいてたんだろう?」
「うん、まあね。…だけど、何でか禰豆子は鬼に見えないんだよね」
Aは自分の胸に頭を預けてすやすや眠る禰豆子を見やる。その眼差しは慈愛に満ちていた。
「私ね、今の禰豆子くらいの妹がいたの。それとわんぱくな弟も」
炭「そうなのか…」
「お母さんは着物屋の出でね、いつも私達の着物を作ってくれた。お父さんは作曲家だからいつも家には音が溢れてた。…皆優しくて、溢れるくらいの愛をくれた」
特に妹と弟は目に入れても痛くないほど可愛かった。お姉ちゃんお姉ちゃんと後ろを着いてきて歩くのを見るのが好きだった。
「私もきっと、禰豆子に自分の妹を重ねてる。禰豆子は禰豆子なのに…ごめんね」
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作者名:アマネム | 作成日時:2023年10月14日 19時