音柱の継子~3~ (ページ35)

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吹雪が化け物を覆いそのまま悲鳴をあげ消えていく。

剱鍾はその光景に見覚えがあった。

あれは鋭刃の祖父であり己の父である人に連れられ出かけた時。
出先の街で鬼に遭遇してしまった二人は今と同じ状況にいた。息子と同じ歳の頃自分も同じ事をし鬼に背中を向けてしまった。
もうダメだと目をつぶると聞こえた声。

そうだ、あの時も。

─大丈夫ですか
「大丈夫ですか？！」

白い生地に赤い雪華模様の羽織と黒く緑がかった髪の毛を揺らす剣士

─二人は私が守ります
「里の皆は私たちが守ります！」

剱鍾はその人が言っていた言葉を今、理解した。

「そうか───そういう事だったのか」

「親父？」

「剱鍾さん？！どこか痛むんですか？！って血ィ思いっきり出てるじゃないですか！！鋭刃、この手ぬぐいで止血しておいて！すぐに隠の人達が来るから、それまで───生きて」

夜の空を背景に見た顔は、彼の人と重なった。

「ああ─────ありがとうAちゃん」

「A────頼む！」

「任せて！」

二人の安全を確認したAは外に出て未だにうじゃうじゃいる化け物を相手にしていく。
音の呼吸は広範囲の攻撃だが相当体力もいる。

「寒河江殿…！」

「皆さんは私の後ろに！」

背後に数人の刀鍛冶を庇いながらAは化け物を倒していく。
しかしどこから湧いてくるのか、敵の数は減らない。

(数が多すぎる……。ダメ、弱音は吐くな！里の皆を守るんでしょ！)

そう考えるあまりAは背後の敵に気づくのが遅れてしまった。

グァァアアア

「しまっ──」

ザシュッ

自分のすぐ側をしゅるしゅると何かが通り過ぎていく。一度だけ見たことがある、鉄のはずなのにこれほどしなるもの──

「…………み」

むぎゅう