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Aは俺に抱きしめられながら小さく泣いていた。
その横を通り過ぎる父さん……いや、糞親父。
YG｢待てよ。｣
怖かった。
俺は初めてこいつに逆らった。
だけど、屈するわけにはいかなかった。
YG｢どうしてAの母親を殺したんだ。｣
こちらを向かずに立ち止まる。
父｢……ミスだ。｣
YG｢……は？｣
父｢殺せば……手に入ると思った。Aの心が。全てを俺に捧げると思った。｣
狂ってる。
そんなの、狂ってる。
父｢お前の心は簡単に手に入らないからな。｣
部屋を出ていく。
俺の感情が全て怒りで包まれた。
あいつのミスとやらで、Aの母親が死んだ。
どんなに悪魔のような母親でも、こいつのたった1人の家族だった人だ。
血の繋がった……
｢……ユンギ……ヒョン、｣
床に手を着く。
Aは母親の血で手が染った。
｢オンマ……｣
YG｢俺がいる。俺がいるから。｣
どうして未だにAが母親のことを想うのか、俺にはわからなかった。
俺は一瞬で、父親のことを嫌いになったのに。
俺は薄情なやつなのか？
それともAが執念深いだけなのか？
｢ユンギヒョンが……いてくれる……？｣
YG｢ああ、ずっと一緒だ。｣
｢僕……もう一人になるの、いやだよ……｣
YG｢この家出よう。2人で生きていこう。｣
フルフル、と首を振るA。
｢僕は……旦那様にたくさん与えられたから……｣
だめだ、行くな。
そっちはダメだ。
YG｢奪われただろ！お前が一番大切だったものだよ！！｣
あいつのところに行くな。
YG｢これからは俺がお前の一番になる。｣
｢……ユンギヒョン、が……？｣
簡単な事じゃないかもしれない。
YG｢正直……Aがまだ母親のこと好きなのが信じらんねえよ。たくさん殴られて傷つけられてきたはずなのに。｣
｢……。｣
もう一度、Aの体をぎゅっと抱きしめる。
離れないように。
｢……ユンギヒョン……｣
Aはそう言って俺の体をぎゅっと抱きしめた。
離さないぞ。
俺は、絶対にこの体を離さない。
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作者名：アザラシ | 作成日時：2021年3月12日 22時
