思いを書き連ね 💛💜 ページ8
💛side
『おい、ふっか』
「はぁい」
ディスクの前の椅子に座りながら、後ろに体重をかけたりしながら、前後して遊んでいるコイツ。
人気作家の深澤辰哉。
俺は、担当編集。
『はぁいじゃねぇよ、締め切りいつだかわかってんのか』
「わかってるわかってる。明明後日でしょ〜」
『わかってんだったら手を動かせ。手を』
焦る様子はこれっぽっちも見せず、まだ椅子に寄りかかっている。
イラッとした。
「だって〜書けないんだも〜ん」
『もんじゃねぇよ』
「じゃあ照かいてよ〜」
『……なに？』
「これこれ〜ここ〜」なんて言いながら、軽く手招きをして、俺に寄るように言ってくるふっか。
「最後はちゅーさせんだけどね、」
『………』
「どーやって書けばいーと思う？」
物語の終盤。
主人公達が、お互いの気持ちを確かめるために口を合わせるシーン。
「教えてくんない？」って…絶対わざとだろ、
『…はぁ……何をご所望なんですか先生？』
「んふふ、なんだろーね？」
俺の首に手を回しながら、イタズラをする子供みたいに笑ってる。
『目、閉じて』
「はーい」
嬉しそうに目を閉じる。
そっとふっかの顔に手を合わせて少しずつ距離を縮めていく。
「んっ、」
ふっかの声と、リップ音だけが部屋に響く。
1秒も立たないうちに距離は離れていく
俺が離してんだけど、
『わかった？』
「んーまだわかんなぁい」
確信犯。
なんなら最初っからわかってんだろ、
『あと1回だけだからな』
「んー」
自分の甘さに呆れながら、もう一度、口を合わせた。
─"強く抱き合った二人は顔を合わせ、見つめ合う。
ほぼ同時に重なった唇はまるで、『もう離さない』
と、言っているようだった。"──
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作者名：Tsukuri | 作成日時：2022年5月12日 20時
