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この間になかむはすごい速さで下まで駆け下りてくれたようだった。あっという間に近くのベンチに降ろされ、私と目を合わせるようにしゃがむ。
「ほら、もう着いたよ。大丈夫、大丈夫だからね」
「ひゅ……ふーっ…はーっ……ひゅー…」
なかむは私の両手を包み込むように握り、ゆったりと優しい手つきで撫でる。しばらく呼吸に集中していたら、ずいぶん落ち着いてきた。
私の頬を伝う涙を、なかむが親指でそっと拭った。声を出すために少々咳き込んだ後、私もなかむと目を合わせる。
「も、大丈夫…ごめんね。結局駄目だったね…」
「落ち着いたっぽくて良かった…俺こそごめん。やっぱり無理に連れ出してたよね」
「なかむは悪くない。行きたいって決めたのは私だし。それに、私が弱いのが駄目なんだから…」
「それは違う」
なかむはきっぱりと、力強く答えた。綺麗な瞳で真正面から見据えられ、意味の無い母音ばかり発してしまう。
「俺がいつでも助けるから。自分が弱いからとかそんなこと言わないで。俺だけに…」
なかむはそこまで言いかけて、はっと気づいたように口を動かすのをやめた。
「なかむ…？」
なかむは気まずそうに目を泳がせた後、意を決した様にしっかりと私の目を見て、言葉をひとつひとつ選ぶように、慎重に話しだした。
「…その、幼馴染だからとか関係なく…俺だけに、Aのこと守らせてよ」
なかむが顔を若干赤く染めながらそう言った。思ってもいなかった事を言われ、私まで釣られて赤面してしまう。
「なに、それ」
「俺、Aが思っているよりもAのこと気にかけてるし、心配してるし、意識してるんだよ。今日だってAの誕生日祝おうと思って、1ヶ月前から誘って…だから、どうしても今日じゃなきゃ駄目だったんだ」
普段と様子が違う。私の知ってるなかむじゃない。こんなに優しい声で、まるで私のことを愛おしいとでも思っているかのような。そんな目をしているなかむなんて、知らない。
「こんな場所で、こんなタイミングで言うつもりなんてなかったんだけど…」
気恥しそうにはにかむその顔も、きっとこの後言われるであろう言葉も、全部がむず痒くて目が合わせられない。火照った顔を見られたくなくて顔を背けても、こっち見て、なんて言いながら頬に手を添えられて、嫌でも目を合わせられてしまう。
「A。俺ずっとAのことが好き。」
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作者名：ピースラワー | 作成日時：2024年4月14日 19時
