�� ページ27
.
瞼を開けて見れば、最初に視界に入り込んできたのは白い天井だった。そしてやけに重い体。顔も手も足も全身が何かで覆われている。動かせる部分は目しかない。唇さえ微動させることができなかった。
目だけを動かせて辺りを見渡せば見覚えのない白い部屋に俺はいるようで。視線を下に落とせばどうやら俺はベッドの上で仰向けになっているらしい。
ここは、何処だ ？
俺は一体、どうなっているんだ ？
何かを見れば見る程に疑問は数を増して浮かんでくる。我ながら記憶喪失を患っている者が言うようなことばかり出てくることに何を言ってるんだと他人事のように笑みが零れそうになったが、俺にはこの状態でいる前の記憶があやふやだった。
『今井さんっ ！！』
覚醒しきっていない頭に溶け込むようにして、何故だか心地良いと感じるその声が聞こえてくる。
酷く懐かしい、そして愛しい。空虚だった心が一気に温かい何かで埋まっていくような。なのにこの声が誰のものなのかが分からなかった。
『目、覚ましたんだ... ！！』
『今井さんもう三日も寝てたんだよ ！！ ...ヤクザに袋叩きにされて入院したって聞いた時は本当に焦ったけど、良かった、』
視界一杯に出てきたのは、真珠のような丸い雫をぽろぽろと目尻から溢れ出していた女の子。
俺を見るなり嬉しそうに頬を緩ませて良かったと祈るように手を組みながら何度も呟き泣いていた。そして何かを思い出したかのように慌てて『今、病院の先生を呼んでくるから ！！』と言葉を残して部屋から走り去ってしまう。
...あの子は、誰だろう。
見覚えがあるような、ないような。
思い出そうとすれば記憶にモヤがかかっているのか曖昧なものしか蘇らない。頭が割れそうに痛かった。何か大切なものがあった筈なのに、忘れてはいけないものがあったような気がするのに。それはなんだったっけ。
「...」
考えれば考える程何だかよく分からなくなりそんな俺の視線は無意識に窓際へと移っていく。
窓の向こうの外の世界は、天候が怪しく今にでも雨が降りそうな黒い雲が空を支配していた。ガタガタと窓ガラスが音を立てる。目線の先の樹は荒い風に揺られながら葉を散らせていた。
その姿が何とも、胸が痛く感じたのは何故か。
幸せにしたかった。
惜しみない愛情を注いで、どれ程の溢れる愛を抱いているのか伝えて、そして全てを愛して人生を共に過ごしたかった。
それは誰に対しての感情なのか
俺は忘れてしまった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 123人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みかど(プロフ) - クソすぎる駄作者さん» 遅くなってすみません ...(´；；｀)少し首を傾げる部分があるご都合展開になってしまいましたが、良ければ書けたので 読んでもらえると嬉しいです (´∀`) ありがとうございました！！ (2019年1月27日 1時) (
レス) id: 740556791c (このIDを非表示/違反報告)
クソすぎる駄作者(プロフ) - みかどさん» 返信ありがとうございます！分かりました！見てみます！ (2019年1月23日 2時) (レス) id: 2effaca00b (このIDを非表示/違反報告)
みかど(プロフ) - クソすぎる駄作者さん» コメント、ありがとうございます ！！ わっわ ！！ 凄く嬉しいです ！！ 本当にありがとうございました ッ！！ m(_ _)m 少し前に書いたものですので 、あやふやですが ... もしも書けましたら 私が作った【小咄】に載せますので お気軽にお待ちくださいませ ... ！ (2019年1月22日 20時) (レス) id: 740556791c (このIDを非表示/違反報告)
クソすぎる駄作者(プロフ) - 忘れたくなかった の続きって書けますか！？書けたら是非お願いします！お気に入り登録、評価失礼しゃす！ (2019年1月22日 19時) (レス) id: 2effaca00b (このIDを非表示/違反報告)
みかど(プロフ) - 美里さん» 励みになる言葉を有難うございます ヽ(*^^*)ノ 頑張りますっ (｀・ω・´)ゝ (2019年1月17日 23時) (レス) id: 740556791c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ミカド
| 作者ホームページ：
作成日時：2018年12月22日 20時
