｢狼ゲーム｣を塗り替えろ！

よわいひとが、ふたり。 ページ29

アナザーストーリー
｢君の狼ゲーム｣

霜月ユキナリ目線EP.1


｢また、逃げるの？｣

確かに、Aさんはそう言った。

｢逃げるの？｣

俺が1番言われたくない言葉だ。
この人、俺の過去を知ってて…！

｢アナザーストーリー『霜月ユキナリの真実』。
その内容は、ユッキーのビジュアル公開とユッキーの過去話についてのものだった。
もちろん、私はそれを見ているよ。｣

｢くっ…｣

｢それ以前に、本編の冒頭で謎の少女が言ってたセリフだもんね、これ。
『逃げるの？』って言葉、嫌いなんだろ？｣
｢………っ｣

ダメだ、全て見透かされている。
彼女には、全部筒抜けなんだ。

彼女は、俺にどう言う声かけをするんだろう。
怒る？嘲笑う？軽蔑する？失望する？

しばらくの時間を要したあと、Aさんは、俺を真っ直ぐに見つめて___




｢_____分かるよ、その気持ち｣



_涙目で。

__どこか、懐かしい表情で、彼女は言った。


｢私、困っている人を見かけたら、無視してた。
恥ずかしいから。話しかけられないから。
迷惑かもしれないから。声が出ないから。

…色んな理由を考えて、自分を正当化してた。

口では、善人ぶって『人を助けたい』なんて
言ってるくせに。
私、ウソツキなんだよ。｣

Aさんは、一言一言をしぼり出すようにしゃべっていた。


｢…でも、そんな逃げ続けてる自分は、もう嫌。

ウソツキで、情けない。
逃げ続けて、進歩しない。

そんな自分が、醜くて。
強がってるのは口だけで、本当はもろいのに。

………私、弱いの。
弱い人間なんだよ。｣

Aさんは、自分のことを話してるのに。
俺は、自分の人間性を語られてる気分だった。

｢でもね、そんな私には、終止符を打つの。

今回の狼ゲーム、私は、誰かを救うんだ。

無視して、正当化するんじゃなくて。
ちゃんと、助けるの。
私は、変わるの。

………ユキナリは、どうするの？｣

｢……おれ、は、｣

｢弱い自分を受け止めて…
そうして、私は、変われる気がする。

…あなたは、弱い自分と向き合える？｣

｢よわ、い、自分…｣

…そうだ。
あの時から、俺は、逃げ続けていた。

『みんな、自分が1番だろう？』

そうやって、自分を正当化しながら。
泣き叫ぶ人の顔なんて無視して、逃げていた。

今回の狼ゲームも、そうだ。

俺は、もう2人の人が誰かのために自分を犠牲にしたというのに、まだ逃げていた。

…俺は、変われるのだろうか。


向き合えるのだろうか。
…弱い、自分と。

高山マキとのお話→←逃げる天使と彼女の作戦

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す