【ジョジョの奇妙な冒険】OPEN YOUR EYES【ダイヤモンドは砕けない】 (ページ2)

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PROLOGUE ページ2

矢安宮Aside

1999年のある日、弟が消えた。

曰く、荷物は机に残ったまま学校から忽然と姿を消したらしい。町中どこを探しても見つからず、親は警察に捜索願を出した。

「…A、貴方はどこにもいかないでね。貴方までいなくなってしまったら、私、」

母はそう言って涙を流した。リビングから自室に戻ろうとした私に縋り付く様なその悲痛な声に、少しだけ胸が痛んだ。

私は、弟がいなくなっても悲しくはなかった。だって私は昔から弟が嫌いで、邪魔で、だからいつだって私の目の前から消えてしまえばいいのにと思っていたから。

『私ちょっと、コンビニ行ってくるね』

夜遅くに危ないぞ、と涙を流す母を抱きしめながらそう言う父の言葉を無視して家を出た。

夜は少し冷えるな、と半袖から覗く腕をさすりながら歩いた。すると目の前に、ひらひらと舞う何かが見えた。目を凝らしてよく見てみるとそれはどうやら写真の様で、何が写っているのか少し気になった私は宙に舞うその写真へ手を伸ばした。瞬間。

『い"っ、ああ…あっ！！』

写真から飛び出た矢が、私の胸を射抜いた。痛みを通り越して熱を感じる傷口。私は感じたことのない痛みに思わず蹲った。すると、目の前に影がかかった。

「おやおや…大丈夫かな、お嬢さん？」

『はあ、はあ…っ』

「大丈夫か、なんて質問は野暮だったね。矢で射抜かれて大丈夫な訳がない。君がそうなったのは私の責任でもあるだろうから、どれ、ここは私が一つ君に手を貸してあげよう。手を貸す、か。ふむ。ところで君は随分と美しい手をしている様だね。矢で胸を射抜かれても死んでいないところから見て、君ばどうやらスタンド使いらしい。美しい手を持っている君は私の“彼女”になれる素質があるが、スタンド使いを殺してしまうのは少し惜しい。と、ここで君に提案なのだが」

男はそこで言葉を止めて、蹲る私の前にしゃがみこみ私の顔を覗き込み、笑顔で、まるで野球場で笑顔でビールを売る売り子達のように、私に問いかけた。

「君が私の為に人殺しをしてくれると言うのなら、私は君を殺さない。さあ、どうする？」

私は悟った。目の前のこの男は人殺しだ。それも一人や二人殺しただけじゃない、きっと何人も何十人も殺している殺人鬼だ。

私は悟った。きっと私も、殺人鬼になるのだろうと。

『…死にたく、ない…！』

私は弟とは違う。きっともう死んでいるであろう弟とは違う。私は生きる。私は生き延びてやる。