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やはり兄は麻薬のような人だ。
俺がほしいと思った時に、ほしい言葉をくれる。
だが、そんな兄は今____。
「うちの冴はなぁ、ほんとうに、ほんとうに凄いんだからなぁ…!」
「おい、飲みすぎだ」
「糸師家で一番のサッカーバカだし!」
「馬鹿にしてんのか」
酔いに酔っていた。
兄はとっくの昔に成人を迎えていて、酒を飲める年齢だがまさかここまで酒が弱いとは思っても……いや、うちの親も酒に弱いから完全に遺伝だな。
こんな兄でも、今やサッカー界ではスポーツトレーナーとして有名な人となっている。
以前手紙に「俺も海外に行くことになった」というウマは聞いていが、まさかスペインにまで兄の話が届くとは思わなかった。
糸師という苗字もあり、チームメイト達やあのレオナルド・ルナにでさえ紹介しろと言われる始末。
兄がスポーツトレーナーになったのはお前らの為じゃない。俺達の為だ。
誰が紹介してやるものか。
「それでいて、一番の頑張り屋さんだから……こうして、世界で活躍してる姿を見れて俺、嬉しいんだ…」
「でも俺は…世界を見て挫折し」
「冴は挫折したという経験を得た」
「…!」
「人は誰しも失敗し、挫折するものだよ。俺だって今まで沢山失敗してきたし、でも今の冴は挫折をして新しい自分になろうと一歩を踏み出した。それは凄いことだ。人生何が起こるかなんて誰にも分からないんだからさ」
「初めっから決まってる人生なんて、何も楽しくないだろ?」
その言葉に、俺は目を見開いた。
兄はいつも凄いことを平然と言ってのける。
それでいて説得力のあることばかり。
「それに日本の至宝なんて呼ばれてるけど、俺の目に映ってる冴はいつも生意気で、俺のこと直ぐに貶すけどただサッカーが大好きで兄弟想いなどこにでもいる普通の俺の弟なんだよ」
「っ…」
兄の言葉を聞いて俺は拳を握りしめ、俯いた。
普通の弟…その言葉が何よりも嬉しくて、泣きそうだった。
加えて凛は良くも悪くも俺と似ているところがあるから俺と同じように兄にこうも優しくされればコロッと堕ちるだろう。
だけどもう、凛には渡さない。
お前は俺がいない間十分構ってもらっただろ。
「冷」
「ん〜?」
「俺と、俺と一緒に____」
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ARy - 好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好きすき家。死んでいいですか (2023年4月30日 21時) (レス) @page16 id: 20866609ad (このIDを非表示/違反報告)
彩(プロフ) - 2コメ失礼します!!イメ画めちゃsukiです…カッコかわいい… (2023年3月22日 20時) (レス) id: 7b1be7f011 (このIDを非表示/違反報告)
ライキ - 「イタチっぽく言うな」がすっごく好きです‼ 面白そうな作品を見ると、大体Yuri様の作品でびっくりしていますw これからも応援しています‼ (2023年3月12日 14時) (レス) @page5 id: 917478dea8 (このIDを非表示/違反報告)
古鳥 - ハワワ…設定も文章もすっごく好きです!!イメ画もお上手ですね!コミュ強のお兄ちゃん、もしかするとブルーロックにトレーナーとして推薦が来たりするのでしょうか!?続きを正座待機!!! (2023年3月9日 23時) (レス) @page11 id: f74057ae4d (このIDを非表示/違反報告)
ずんだ餅 - 死人三号DAZE☆ イメ画うめぇ、これからも更新待っときます✨ (2023年3月7日 22時) (レス) id: 366c5c0809 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雄里 | 作者ホームページ:https://twitter.com/Yuri_Asum
作成日時:2023年3月3日 21時