検索窓
今日:15 hit、昨日:66 hit、合計:117,982 hit

(3) ページ13

.





俺の兄である糸師 冷は麻薬のような人間だ。



別に実際の麻薬のように気持ちよくなるとか意識が吹っ飛ぶと言ったそういうものじゃないが、兄に甘やかされ、肯定されるだけでズブズブと沼って抜けることが出来なくなる…俺が唯一甘えられる人。


一緒に学校に通った事は年齢の関係で一度も無いが兄は俺と違いサッカーの才能はないが、コミュニケーション能力に長けていた。


それに加え、勉強は得意で後に知ったが兄が進学した学校はかなり倍率と偏差値が高い学校だったらしいが、余裕で合格を貰うほど頭脳明晰。


俺と凛にコミュ力とそういった面の脳がないのは兄に持っていかれたからだろう。
逆に兄はサッカーの才能を俺達に持っていかれたが。


そして今日、日本に帰国して凛と決別した。
俺だって夢を諦めたくなかった、だが諦めざるを得なかった。
世界には俺より凄いやつなんてごまんといた。


俺は悩んだ。誰にも胸の内側を、誰よりも信頼している兄にでさえ相談せず。
渡西する際、兄は言った。



「些細なことでも良いんだ。スペインの生活や人間関係。辛いこと、嫌なことがあったら少しでも話して気を楽にしてほしい」



当時はその気遣いが少し照れくさかったが有難かった…でも、近況報告をたまにするだけで今俺がどんな気持ちでいるのかは打ち明けなかった。


サッカーがクソ下手で出来なくとも、俺にとって兄は尊敬している人だ。
例え手紙や電話越しでも、兄に弱いところ見られたくなかった。
だから、何も言わなかった。いや、言えなかった。


でもいざ四年ぶりに兄と対面したら、無理だった。
皮肉な話だが、凛が俺に適わないように俺も兄には適わなかった。
昔からそうだ。悪いことをしたら叱るが、基本的に兄は俺の話を聞いて否定せず、俺のことを肯定した。



「冴は凄いなぁ…!」


「冴は才能もあるのに、努力を惜しまないなんて俺尊敬するよ」


「__冴の人生は冴のものだ。お前の選んだ道に俺は余計な口出しはしないよ」


「っ…」




.

(4)→←(2)



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (439 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1153人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ARy - 好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好きすき家。死んでいいですか (2023年4月30日 21時) (レス) @page16 id: 20866609ad (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 2コメ失礼します!!イメ画めちゃsukiです…カッコかわいい… (2023年3月22日 20時) (レス) id: 7b1be7f011 (このIDを非表示/違反報告)
ライキ - 「イタチっぽく言うな」がすっごく好きです‼ 面白そうな作品を見ると、大体Yuri様の作品でびっくりしていますw これからも応援しています‼ (2023年3月12日 14時) (レス) @page5 id: 917478dea8 (このIDを非表示/違反報告)
古鳥 - ハワワ…設定も文章もすっごく好きです!!イメ画もお上手ですね!コミュ強のお兄ちゃん、もしかするとブルーロックにトレーナーとして推薦が来たりするのでしょうか!?続きを正座待機!!! (2023年3月9日 23時) (レス) @page11 id: f74057ae4d (このIDを非表示/違反報告)
ずんだ餅 - 死人三号DAZE☆ イメ画うめぇ、これからも更新待っときます✨ (2023年3月7日 22時) (レス) id: 366c5c0809 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:雄里 | 作者ホームページ:https://twitter.com/Yuri_Asum  
作成日時:2023年3月3日 21時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。