(1) ページ11
.
「…冴?」
前方から歩いてきた人物は四年振りに会えた冴だった。
帰国するのは明日って聞いてたけど、早まったのか?
それに以前までの生き生きとした顔はどこへやら、街灯に照らされた冴の顔はやつれていた。
「っ冷!」
「おっとと、」
冴は引いていたスーツケースから手を離して俺に抱きついてきた。
俺は冴を優しく抱きとめると、冴が少し震えているのが分かった。
「どうした、さ」
「凛と、仲違いした」
「え…?」
一瞬、俺の聞き間違えかと思った。
あんなに仲の良かった二人が仲違い…? 有り得ないと思ったけど冴が巫山戯てこんな事を言う訳がなかった。
「何があった?」
「…世界は凄いって思い知って、夢を描き変えた。俺は世界一のストライカーじゃなくて世界一のミッドフィールダーになるって」
「…!」
小さい頃からあんなに俺や凛に向かって世界一のストライカーになると言っていた冴が突然のポジション変更。
だが、俺も海外に行って数々の試合を近くで見ていたが日本サッカーの実力の差が凄いと実感した。
全員が日本のプロを余裕でその更に上を行くほどの実力やフィジカル、戦略。
今まで負け無しだった冴でも、世界の壁というやつを知った…つまり挫折してしまったんだろう。
「それで、凛に「兄ちゃんじゃないって」否定されて…俺は…」
冴から事の顛末を簡単に聞くとなんとも頭を悩ませる内容だった。
冴も凛に酷いことを言ったようだが、凛も冴に更に追い討ちをかけたとか…これはお相子の予感がするぞ。
言い方が悪かったにも程がある。
「そっか…でも冴は凄いな。俺がもし冴の立場だったらきっとサッカーが嫌いになってるよ。例えポジ変してもサッカーを続けられるってサッカーが好きじゃないと出来ないことだ」
「冷…」
だから俺はお前を尊敬してるんだ。
ただ一つの事に集中して取り組めるって凄いことだ。
「それに多分冴も分かっているとは思うけど、凛はただ冴に夢を諦めてほしくなかったんだろうな」
「…!」
「俺はお前らがどんな夢を見て、約束したのは知らないけど……冴の人生は冴のものだ。お前の選んだ道に俺は余計な口出しはしないよ」
.
1153人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ARy - 好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好きすき家。死んでいいですか (2023年4月30日 21時) (レス) @page16 id: 20866609ad (このIDを非表示/違反報告)
彩(プロフ) - 2コメ失礼します!!イメ画めちゃsukiです…カッコかわいい… (2023年3月22日 20時) (レス) id: 7b1be7f011 (このIDを非表示/違反報告)
ライキ - 「イタチっぽく言うな」がすっごく好きです‼ 面白そうな作品を見ると、大体Yuri様の作品でびっくりしていますw これからも応援しています‼ (2023年3月12日 14時) (レス) @page5 id: 917478dea8 (このIDを非表示/違反報告)
古鳥 - ハワワ…設定も文章もすっごく好きです!!イメ画もお上手ですね!コミュ強のお兄ちゃん、もしかするとブルーロックにトレーナーとして推薦が来たりするのでしょうか!?続きを正座待機!!! (2023年3月9日 23時) (レス) @page11 id: f74057ae4d (このIDを非表示/違反報告)
ずんだ餅 - 死人三号DAZE☆ イメ画うめぇ、これからも更新待っときます✨ (2023年3月7日 22時) (レス) id: 366c5c0809 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雄里 | 作者ホームページ:https://twitter.com/Yuri_Asum
作成日時:2023年3月3日 21時