失礼な、純愛だよ【鶴蝶】

＊＿5 ページ5

.







不意に名前を呼ばれた。




『え……？』


「A、なのか？」





私はゆっくり、顔をあげて「もしかして」という希望を抱いて目の前の男性を見た。
黒髪のセンター分けの髪型、赤と白のオッドアイに凄い傷痕。


見た目は変わっていても、すぐに分かった。





『かくちょー、くん…なの？』


「…ああ」


『っ…』






その瞬間、目から涙が溢れてきた。
銃を向けられた恐怖よりも、会えた嬉しさで。
人ってこんな状況でも嬉しいと泣くんだ…。




「っすまない。お前に怖い思いをさせて…！」


『ち、違うの……確かに、かくちょーくん怖かったけど……また、会えて、嬉しくて…』


「…！」




十九年間……会えなかった彼と再会した。
ロマンティックな再会じゃなかったけど…それでも会えた。
嬉しくないわけが無い。




『わたし…ずっと、会いたかった…あの日以来、どこにいるのか、わかんなくて…手紙も送れなかったし…』


「ああ…」


『もう十九年経ったけど…本当に、会えて良かったっ』




私がそう言うと鶴蝶くんが私を抱きしめてきた。
……へ？ ………ん！？




『かっ！？ 鶴蝶く』


「俺も…会いたかった」


『！』


「ずっと会いに行きたかったけど、行けなかった…すまない」





……わたし、しぬんか？？
超カッコよくなった鶴蝶くんに抱きしめられて？
会いたかった発言されて？？

え？？？





『かくちょーくんせっしゅかたでしんじゃう…』


「A！？」





無理、マジ無理死んじゃう。









.

＊＿6→←＊＿4

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す