第一話 超常な日常 ページ3
＊
空を飛び回る鳥人間、異形の者が街を闊歩する……。嘗て、ヨコハマでも異能力があったが、こんなに堂々とはしていなかった。可笑しな世界だとつくづく思う。けれども、此の可笑しな世界で私達が生きているのもまた事実である。
「……福沢。何見てるんだ？」
「否、別に。ボォッとしてただけだよ」
愛想善く嗤いながら答えると、彼はそうか、と素っ気ない返事を返した。
轟 焦凍。私と同じ学級の友人だ。No.2ヒーロー、エンデヴァーの息子である。
成績優秀、運動神経抜群、眉目秀麗と三拍子揃った彼だが、一寸だけ性格が歪んでいる。誰とは云わないが、矢っ張りこういう人間は何かで歪んでしまうものなのだろうか？
あの時、あの二人に拾われてから、早いもので五年が経つ。その間に色々な事が有った。
幼馴染みの二人と別れたり、元の世界の色々な馴染みの人間に出会ったり、此の中学校に入学したり……。
今や中学三年生、十五歳になった。要するに受験生である。私が受ける高校は、既に決めていた。
「轟君も受けるんだっけ。雄英」
「ああ。福沢もだろ？」
うん、と頷くと彼は少しはにかんだ。一緒に受かれたらいいな、とも云ってくれた。……此の表情をいつもしていたら、もっと親近感が湧くのだが。
昔は此れよりもっと近寄りがたかったのだが、何年か話している内にかなり打ち解けてくれた。懐きにくい猫が漸く懐き始めてくれたみたいで結構嬉しい。
「でも、確か轟君は推薦枠じゃなかったっけ。かなり有利じゃないの」
「……そうだな。けど、厳しいと思う。強ぇ奴も居るだろうし」
【俺より】とは云わないのは自信の表れだろう。こんな事を云えば彼はおそらく不機嫌になるだろうが、そういうところは父親に似てるのかもしれない。
「福沢も、頑張れよ」
思わぬ応援に目をパチクリとさせる。彼は一寸躊躇って、覚悟を決めた様に云う。
「…………雄英、一緒に行こう」
「そうだね。……約束しよう」
子供みたいにそんな言葉を使って、二人で少しだけ嗤った。
そういえば、幼馴染みの彼等は如何しているのだろうか？ 形は多少違えどヒーローに憧れていた、あの二人。
あの『約束』を彼等は未だ覚えているだろうか？
嗚呼、彼等とまた逢いたい。
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亞亭(プロフ) - ぐだ子さん» コメントありがとうございます。私自身が乱歩さん推しなので、結構多目に出てくる予定です(笑)。これからも応援よろしくお願いいたします。 (2019年1月26日 20時) (
レス) id: 6c649d127e (このIDを非表示/違反報告)
ぐだ子 - 乱歩さああああああ！！！← すごく面白かったです！！これからも頑張ってください！！ (2019年1月8日 19時) (レス) id: 9d73ceb014 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：亞亭 | 作成日時：2019年1月4日 21時
