最高峰《短編集》 (ページ2)

今日:6 hit、昨日:1 hit、合計:5,306 hit

… 薬指 kwkm ページ2

kwkm→｢｣貴方→『』
．

｢……｣

『お疲れ様。卒業おめでとう。』

｢ああ、…ありがとうな｣

晴れの日は暖かい日差しがカーテンを通る。
外でお散歩したりご飯食べたり

雨の日は雨の音が沈黙を破る。
ジメジメしているからお家でゆっくり過ごす

そんな日々が続けばいいと思っていた。
だけどそれも今日でおしまい

『いや～～凄いよ。東大卒業して海外なんて笑
私じゃ絶対飛行機怖くて乗れないや…』

お得意のおふざけで何とか場を乗り切ろうとする。
今でももう泣きそうなのに

『…あ！こっち帰ってきたら絶対お土産ちょーだいよ？？お菓子とかがいいな！変な置物とか買ってきたらマジで許さないからね！？』

拓朗は黙ったまま少しふふっと笑って
優しく頷きながら私の話を聞いてくれていた。

『あ！そんでね！世界遺産とか見てみたいな～～
世界遺産じゃなくても綺麗な景色がみたい！それから、…それ、…から…っ』

駄目だ。冗談言えるのももうここまでだ。
込み上げてきて溢れてくる。

『…拓朗、…っ…と…一緒が良い…の…に』

最初で最後の我儘が思わず口から出てしまった。
出さないって決めてたのに。

｢…A｣

拓朗は私の事を優しく抱きしめた。

｢俺はQuizKnockをやめる訳じゃないよ。
ただQuizKnockの為にもっと出来ることをする必要があると思ってるだけ。だから今まで支えてきてくれたAのこと絶対忘れへん。｣

｢…俺だって、離れんの嫌や。｣

震えた声はちゃんと私に届いて
余計に涙が溢れる。

『…病気とかしたら怒るからね。
私ひとりでも現地に向かうから』

｢最後までAらしいな、｣

触れるだけのキスをして
拓朗は私の手を握る。

｢俺の姿が見えんくても、
ずっと応援しててくれるか？｣

･

『いきなり帰ってくるとかふざけてる？笑』

｢ごめんな待っててくれてありがとう。｣

『平気だよ』

｢今日の飲み会って…｣

『オフィスの皆が企画したの
おかえりなさいは皆でしたかったからね、』

｢…Aなんか変わった？｣

『いや、別に』

｢俺の知ってるおふざけAちゃんじゃないな｣

感動の再会にしてはロマンスの欠けらも無い
私の部屋のベランダ

お互い疲れた体を更にお酒で流す

｢じゃあ結婚しよか｣

冷たくて気持ちいい風が二人の間を通る
拓朗の言葉が私に届く

『…おふざけ川上さん好きですよ』

これが私のふざけた返事だ。