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カナダ・トロントー。
高層ビルが立ち並ぶダウンタウンで、針のように空へとそびえ立つ建築物があった。
かつては世界一の高さを誇ったCNタワーだ。
地上三百五十六メートル地点にある展望台の屋根に、オレンジ色のツナギを着た七人の男女が立っていた。
屋根の上部をぐるりと一周するレールからぶら下がったケーブルにハーネスを繋ぎ、屋根に掛かった狭いプラットフォームを一列になって歩いている。
誰もがその高さに圧倒されて足がすくむ中、先頭のガイドの男は地面の上を歩くかのようにスタスタと歩いて行った。
男『このCNタワーは開業から三十二年間、世界で最も高い塔だったんですよ。
そしてこのエッジウォークは百十六回部分に当たり、何と高さは三百五十六メートル!』
男はそう言ってプラットフォームの縁に立ち、真下を覗き込んだ。
観光客たちから短い悲鳴が漏れる。
男『どうです?皆さんも少し身を乗り出して下を覗いてー』
男が観光客に顔を向けているとー突然、背後からヘリコプターのローター音が聞こえてきた。
観光客『あ、ヘリコプター』『真っ黒のヘリなんて珍しいね』
観光客の声に、男は背後を振り返った。
機体が漆黒の闇のように塗られたヘリコプターがタワーの近くを飛んでいるー。
男『あのヘリ…まさか…』
男の表情が雲る。
その時、どっと男の体が大きく揺れた。
胸に熱いものを感じて、下を見る。
男『あ…ああ…』
ツナギの胸の部分に染み出た赤い血がみるみる広がっていった。
プラットフォームの縁に立っていた男は力なく前へと崩れた。
ハーネスに繋がっているケーブルがピンと張り、男の体が大きく外側に傾く。
空中に身を乗り出して宙吊りになった男に、観光客から歓声と拍手が起こった。
だらりと伸びた男の袖口から血が流れている事に誰も気づいていなかったー。
黒いヘリの開いた扉から足を投げ出して座った女は、蝶のタトゥーがある左目を開けてライフル銃のスコープから目を離した。
ヘリコプターは大きく旋回して、CNタワーから徐々に離れていく。
コルンと双璧を成す優秀なスナイパー、キャンティは宙吊りになった男を見てふっと嘲笑った。
キャンティ『ざまあないね。スパイにふさわしい死に様だよ』
吐き捨てるように言うと、ヘッドセットのマイクを口元に近づけた。
キャンティ『アクアビットを始末したよ』
ベルモット『流石ね。すぐに戻って』
キャンティ『あんたに言われなくてもそうするさ』
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9Sに殺されたいロリコン - いつも思うの鳩ぽっぽー (2019年9月7日 15時) (レス) id: 23809db5c5 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 私も二がいいです (2017年9月27日 23時) (レス) id: 5016550d2e (このIDを非表示/違反報告)
自由狐(プロフ) - 2がいいです( ・ ω・ )(アンケートの時だけ来てすいません) (2017年9月27日 23時) (レス) id: bbf60e75fb (このIDを非表示/違反報告)
友姫(プロフ) - りんさん、ありがとうございますこれからも楽しんでいただけるように頑張りますね(*^^*) (2017年9月22日 23時) (レス) id: ca7f04bc18 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 続編おめでとうございます続き楽しみにしてます (2017年9月22日 22時) (レス) id: 5016550d2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:友姫 | 作成日時:2017年9月22日 21時