茨の谷の反逆者 Ⅱ (ページ14)

今日:30 hit、昨日:9 hit、合計:18,329 hit

61話ページ14

そう言ってシェーンハイトは出ていった。
この学園だけに留まらずレイペアが言うことを聞きそうな相手は彼しかいない。

……何故か分からないが、レイペアはシェーンハイトに懐いているようだから。

「リリア」

「なんじゃ」

「まず手始めにレイペア領はすべてヴァンルージュの管理下へいれる。いいな？」

「あい、わかった。わしが管理するのが1番穏便に過ぎよう」

他のものが管理すればAが使えなくなってしまう。そうなるとこの計画がバレるからのう。

……まったく、戦争が無くなったというのにこんなことになるとは。
どうして平和は我らを愛してはくれぬのだろうか。

「ところでマレウス」

「なんだ？」

「お主、Aが茨の谷を去るのが嫌なのか？」

「……別に嫌ではない。言ったろう、僕とレイペアは親しくない。……ただ、次期当主として国民がその土地に残りたいと言うなら配慮すべきと思っただけだ」

「そうか。ありがとう」

きちんと上に立つものとして育ってくれて嬉しいぞ。
国民のために王はいる。
そして、王のための国民じゃ。

対等でなくても、対等に接し相手の立場をおもんばかる。……それこそが国王の資質じゃ。

「…まあ、だが……茨の谷が弱者にとって住みづらい土地なのは確かだ」

「うむ。そのためにシルバーも厳しく育て上げたんじゃ。茨の谷で生きていけるように。……しかし晩年は魔力も肉体も衰える、最後まで茨の谷で暮らすことは叶わんじゃろう」

それは妖精でも変わりない。
きっとわしとて、終わりが近づけば茨の谷に居続けることは出来ん。
それほど魔力が豊富で過酷で美しい国だから。